当院の不妊鍼灸実績
2023.1~2025.12/40症例を調査
年齢
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30〜39歳(構成は30〜34歳が約3割、35〜39歳が約7割)
既往治療歴
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多くの方が体外受精または顕微授精を経験しています。
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複数回の採卵および胚移植歴を有する方を含みます。
不妊原因(重複あり)
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原因不明不妊、卵管因子、男性因子、排卵障害、子宮内膜症、複合因子など一般的な不妊治療外来に近い背景をもつ集団に対して鍼灸治療を行っています。
グループ分け
採卵前の状況により2群に分類しました。
① 採卵前に定期的な鍼灸を受けた方
採卵予定日前12週間のうち、鍼灸6回以上かつ2週に1回以上を満たした方
14名
② 採卵前に定期的な鍼灸を受けなかった方または不十分であった方
上記条件を満たさない方
26名
※ なお、胚移植周期における鍼灸施術は両群で行われています。
評価した内容
初回の胚移植から12か月以内に出産に至ったかを確認しました。
複数回の胚移植を含む累積結果として評価しています。
〔結果〕
結果① 12か月以内の出産率(累積生児出生率)
採卵前に定期的な鍼灸を受けた方 42%(14人中6人)
採卵前に定期的な鍼灸を受けなかった方または不十分 38%(26人中10人)
定期的な鍼灸治療を行った群で、わずかに高い傾向がみられました。
結果② 臨床妊娠率(胎嚢確認)
採卵前に定期的な鍼灸を受けた方 57%
採卵前に定期的な鍼灸を受けなかった方または不十分 50%
結果③ 出産までにかかった期間(中央値)
定期的な鍼灸あり 8.7か月
定期的な鍼灸なしまたは不十分 8.6か月
妊娠成立後の経過期間には大きな差はみられませんでした。
医学的にみた位置づけ
30〜39歳の体外受精治療では、12か月以内の出産率は約30〜50%と報告されています。本結果は一般的な医療データの範囲内であり、やや良好な成績と考えられます。
大切なポイント
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30~39歳という集団の中で、初回胚移植から12か月追跡できたという点においては非常に価値のあるデータだと考えています。
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年齢は最も大きな影響因子です。
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結果には個人差があります。
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複数回の移植によって累積確率は上昇します。
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体調管理は治療を支える要素の一つです。
当院からのメッセージ
不妊治療は一度の結果のみで評価されるものではなく、時間をかけた積み重ねの治療です。身体と心の状態を整えながら、無理のない形で治療を継続していくことを大切にしています。
本資料の限界
1.症例数の限界
本解析は40例であり、人数としては限定的です。偶然によるばらつきの影響を受けやすく、42%と38%の差が統計的に意味を持つかは断定できません。結果は傾向として解釈する必要があります。
2.無作為比較試験ではない点
鍼灸の実施はランダムに決定されたものではなく、患者自身の選択や通院状況によって決まっています。体調管理への意識、通院継続力、生活習慣、治療への積極性といった要因が結果に影響している可能性があります。
3.年齢構成の影響
対象の約7割が35〜39歳であり、不妊治療における最大の規定因子である年齢の影響を受ける可能性があります。
また、体外受精や顕微授精をすでに経験している方が多いという点で、2022年に東京有明医療大学附属鍼灸センターの報告と共通する背景を有しています。妊娠率向上を目的とした来院理由が多い一方で、実際には不妊治療に伴う心理的負担の軽減というニーズが基盤に存在していると考えられます(東京大会抄録)。
4.治療条件の非統一性
刺激法、胚のグレード、凍結または新鮮移植、ICSIの有無、施設ごとの治療方針が個々に異なります。本資料は実臨床の観察結果であり、条件を完全に統一した比較ではありません。
5.鍼灸単独効果を示すものではない点
本結果は鍼灸そのものだけでなく、体調管理の継続、定期的な通院、治療継続の支援といった総合的要因を含んでいます。鍼灸のみが結果を変えたとは言えません。
6.単施設データである点
当院の患者背景や診療体制を反映した結果であり、他施設で同様の結果が得られるとは限りません。
まとめ
本資料は日常の鍼灸臨床の中で得られた観察結果をまとめたものであり、鍼灸の効果を証明する研究ではありません。結果には個人差があり、治療成績は年齢や医学的背景によって大きく変化します。
ブログ
「不妊治療と鍼灸」というシリーズを掲載しています。
このページを書いた人
PROFILE
監修
鍼灸師 松浦知史
東京有明医療大学主席卒。福島県立医科大学会津医療センター研修。研修終了後は埼玉医科大学東洋医学科、ならびに同大学かわごえクリニックを経て、大慈松浦鍼灸院、神保町十河医院附属鍼灸院副院長。

