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Speciality
サポーティブ・パリアティブ
当院では、がん患者さんやそのご家族が抱える様々な症状やお悩みに対しても鍼灸治療を積極的に行っています。
鍼灸師の役割ってなんだろう?
「鍼灸師に何ができるのだろう?」と疑問に思う方も多いかもしれません。がん患者さんにとって、鍼灸師はどんなサポートをしてくれて、どんな役割を担っているのでしょうか。
鍼灸師の仕事= think you
つまり、疾患ではなく「あなた」を診ることです。
がん患者さんを事例に、鍼灸師の役割について考えてみました。

この記事を書いている「わたし」は
私が鍼灸師を志したのは、高校3年生の夏のことでした。
商業高校に通っていた私は、大手企業への就職もすでに内定していました。そんな矢先、父に「肝臓がん」が見つかったのです。その知らせはとても衝撃的で、当時の不安な気持ちは今でも鮮明に覚えています。
がん患者さんに対して鍼灸治療を実践できる鍼灸師になりたい。その願いを実現するために、私は福島県立医科大学会津医療センターで研修を受ける道を選びました(現代医学の知識や治療方針を理解するとともに、現在の医学だけでは十分に解決できない課題を学ぶことが目的)。
研修を通して、がん患者さんが抱える特有の身体の変化について深く学ぶことができました。また、治療に携わる医師や看護師との連携がいかに重要であるかを実感しました。さらに、鍼灸が症状緩和において患者さんの力になれる可能性を感じ、その生活を支える大きな力になり得ることを実感しました。
● ガイドラインの中の鍼灸の取り扱い
ガイドラインでは鍼灸治療がどのような位置づけになっているのかを、まずは一覧表を確認してみましょう。
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NCCN(Adult Cancer Pain, 2025版):最新版では「非薬物介入を含む統合的な疼痛管理」の重要性を明記しており、非薬物療法の選択肢の一つとして鍼灸を含めた統合的アプローチが紹介されています。
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ASCO / SIO(2022):ASCOとSociety for Integrative Oncologyの合同ガイドライン(2022)は“統合医療”の立場からの推奨を出しており,鍼灸などが一般のがん疼痛や筋骨格系の痛みに対して採用され得ることを示しています。エビデンス評価は“中程度”の根拠・推奨とされる領域があり、「完全な高品質エビデンス一色ではないが臨床的利用を支持する」という位置づけです。
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日本緩和医療学会(2020):2020年版の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン』では、鍼灸に関する記載がありません。これは、薬物療法に焦点を当てたガイドラインであるためと考えられます。ただし、日本緩和医療学会が発行した『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)のガイドラインには、鍼灸についての記載があります。
● ガイドラインから読み取る鍼灸の立ち位置
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位置づけは“補助/併用”が基本
多くの主要ガイドラインは「基本は薬物療法(利益>不利益)」を前提にしており、鍼灸は単独で第一選択になるよりも、薬物や理学療法などと組み合わせる補助的選択肢として扱われることが多いです。
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適応の選別が重要
骨転移による疼痛、神経障害性疼痛、治療後の筋骨格痛などで鍼が有効となる報告がある一方、重度の血小板減少(出血リスク)や皮膚・組織が損なわれている局所(放射線皮膚障害や腫瘍直下の皮膚)などでは注意が必要です。
まとめ
多くの国際/国内ガイドラインはまず薬物療法(WHOラダー等)を基盤とし、薬物で十分コントロール困難な場合や薬物の副作用を抑えたい場面で鍼灸などの非薬物的介入が補完的に検討される、という立場です。ただしASCO/SIOや最近のNCCN(2025)などでは鍼灸を積極的に“選択肢”として扱う方向に変化してきている点が重要です。
鍼灸師の役割を探る
『がんの補完代替療法ガイドブック 第3版』(2012年)では、39ページに鍼灸に関する情報がまとめられています。 内容としては、鍼灸の歴史や治療の目的、臨床試験での有効性、施術時の注意点などが記載されています。
👉四国がんセンター
https://shikoku-cc.hosp.go.jp/cam/dl/pdf/cam_guide(3rd)20120220_forWeb.pdf
また、日本緩和医療学会が発行した『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)のガイドラインにも、鍼灸についての記載があります。
👉 Ⅲ章 各論:クリニカル・エビデンス
https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=92
「鍼灸」に対する学術的関心が、高まってきている
「がんに対する鍼灸」をテーマとした研究は、補完代替療法の専門誌に限らず、腫瘍学や臨床医学の一流誌にも掲載されてきました。
実際に、Rui Shangらによる文献レビュー(Medicine, 2024)では、1985年から2023年までに592件の関連文献が収集されており、年ごとに発表数が増加していることが示されています。

この傾向は、がん医療の中で鍼灸に対する学術的関心が年々高まっていることを反映していると考えられます。
Rui Shang, et al., Current and future trends of acupuncture as an adjuvant therapy in cancer: A bibliometric and visual analysis. Medicine. 2024.
さらに、対象となった文献の掲載ジャーナルをみると、JAMA(IF 120.7)やJournal of Clinical Oncology(IF 45.3)といった超一流誌、さらにはCochrane(IF 8.4)にも鍼灸とがん治療に関する研究が取り上げられています。
これは、「鍼灸とがん治療」の研究が、医学全体において認められるエビデンスを生み出しつつあることを示唆しています。

次に、この分野で影響力のある論文をみてみます。被引用数が多い論文ほど、研究の信頼性や国際的な注目度が高いと考えられます。
実際に、鍼治療に関する代表的な論文は、化学療法に伴う症状(悪心・嘔吐など)、がん患者における疼痛、倦怠感、不眠といった領域に集中しており、これらが臨床現場での大きな課題であることを反映しています。

そして、『4. Discussion』には"the hottest theme being cancer-related fatigue"と記載があり、研究者で最も関心の高いトピックは「がん関連倦怠感」でした。
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