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病鍼連携・診鍼連携

鍼灸院との医療連携について

よくある質問

Q. どんなときに紹介すればよいのでしょうか?

A. 現時点では、鍼灸導入に関する明確な基準やガイドラインは存在していません。しかし、以下のようなケースでは鍼灸が有効と考えられ、紹介を検討する価値があります。

① 臨床試験で効果が立証されている疾患・症状

 以下のような国際的・国内のエビデンスをもとに、鍼灸の有効性が認められています:

  • Cochraneレビュー(2021年)

    • 緊張型頭痛、片頭痛予防、術後の嘔気・嘔吐、前立腺炎症状、慢性腰痛、産痛軽減、線維筋痛症、骨盤位妊娠(灸)

1) 緊張型頭痛(Tension-type headache)

  • Cochrane(以前のレビュー)は「鍼は頻発性/慢性緊張型頭痛に対して有効と示唆」としており、2022–2025年にも新しい研究が蓄積され、有効性を支持するエビデンスは継続している。

2) 片頭痛(予防)

  • Cochraneの既存レビューは片頭痛予防への効果を「示唆」していました。最近(2023–2025)にもプロトコルやRCTの更新が続いており、予防効果を示す試験が追加されていますが、結果は研究デザインに依存してばらつきがあります(全体として「有益の傾向」)。

3) 術後嘔気・嘔吐(PONV)

  • PC6(内関)刺激によるPONV抑制のエビデンスは堅固で、複数のメタ解析で有意な効果が示され続けています。従って「術後の嘔気・嘔吐対策としての鍼/経穴刺激」は臨床上有用な選択肢であり、麻酔・周術期チームと連携した導入が現実的です。

4) 慢性腰痛(chronic low back pain)

  • IPDメタ解析や複数の最新SR/MAで「鍼は無治療/通常ケアに比べて短期〜中期の疼痛軽減・機能改善を示す」との結論が再確認されています。2024–2025年のレビューでもその傾向は支持されており、臨床での非薬物オプションとしての地位は確立されつつあります。

5) 産痛軽減(labor pain)

  • 鍼・灸による分娩時の痛み軽減や陣痛促進などの効果を示す報告は継続的にあり、特に灸による骨盤位修正(breech → vertex)についても中等度の確実性で効果が報告されています(moxibustionの研究が増加)。ただし産科管理や安全性の観点から施設・医師との連携が重要です。

6) 線維筋痛症(fibromyalgia)

  • Cochrane(2022)では「電気鍼併用などは有益/鍼単独は効果が限定的」との結論でした。2023–2025年の研究でも補完療法としての有用性(疼痛・疲労・QOLの改善)は引き続き示唆されており、特に電気刺激を併用した介入の報告が増えています。全体のエビデンス精度は中等度。

7) 前立腺炎症状(慢性前立腺炎/CP/CPPS)

  • 近年のシステマティックレビューやRCT(中国を含む)で 鍼/灸が症状改善に有意とする報告が増加しています。ただし多くが小規模かつ盲検が困難な点、地域差(研究の地域偏り)がある点は留意。最新レビューは治療効果の可能性を支持しています。

8) 骨盤位(breech)に対する灸(moxibustion)

  • moxibustion(灸)を用いた研究については、2021–2023年のメタ解析/レビューで中等度の確実性で頭位回転効果が示されており、Cochraneの該当ページでも効果を示唆しています。2025年の総説群でも肯定的な結論が多く、臨床での利用が広がっています。

  • 国内診療ガイドライン​

​ 2024年末時点で、鍼灸の推奨度が明記されている国内の診療ガイドラインは少なくとも19件存在する。これらのガイドラインには合計28件の推奨が記載されており、そのうち18件は鍼灸を肯定的に推奨する内容である。特に2020年以降、鍼灸に肯定的な推奨の割合は増加している。

※国内の診療ガイドラインの記載状況に関しては山下らの報告を参照してください。

👉「鍼灸の推奨度が掲載されている国内の診療ガイドライン

​全日本鍼灸学会雑誌,2025年第75巻2号,277-286

  • UpToDate® 推奨項目

    • 慢性疼痛、急性疼痛(歯痛含む)、頭痛、慢性閉塞性は疾患(COPD)および呼吸困難、アレルギー性鼻炎、更年期ホットフラッシュ、がん性疼痛、化学療法の副作用(嘔気・倦怠感など)

 

※これらに加え、現代医学で有効な治療法が少ない症状にも、鍼灸は代替または補完療法として選択されることがあります。

 

② 医学的に説明のつかない症状(Medically Unexplained Symptoms)

 鍼灸は、以下のような機能性疾患・心身症にも対応できます:

  • 線維筋痛症

  • 過敏性腸症候群(IBS)

  • 機能性ディスペプシア

  • 筋・筋膜性疼痛(ストレスや緊張が関与するケース)

 

③ 漢方薬が使用できない、または効果が不十分な場合

 鍼灸は、漢方薬に近い作用を持つ治療法としても利用できます。以下のような場面で有効です:

  • 体質や副作用により漢方薬が使用できない

  • 効果が限定的であった場合

  • 鍼灸との併用療法を通じて相乗効果が期待できる場合

 

④ 内服が困難な患者、腎機能障害、既存治療で効果不十分な場合

 薬物治療が制限されるケースや、慢性的な訴えがコントロール困難な場合にも、個別の病態に応じた鍼灸治療が選択肢となり得ます。

まとめ

 「診鍼連携」とは、単に紹介するだけでなく、医師と鍼灸師が双方向で情報を共有し、より良い医療を一緒に支える仕組みです。
 当院は、地域の医療機関と連携しながら、患者さん一人ひとりにとって最適な治療を届ける体制づくりを進めています。

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