- 大慈松浦鍼灸院

- 2025年12月1日
第1回『不眠症』
2025/11/29(土)19:30~
ハリメドのセミナーが無事に終了しました。
事前の参加希望人数は 230名 を超えました。
ご参加くださった皆さま、事前質問をお寄せいただいた先生方に心より感謝申し上げます。
引き続き、医療と鍼灸の連携を深める取り組みを進めてまいります。

さて、セミナー終了後の医師との対談で、私の予想外で興味深い指摘がいくつか挙がりました。
Q. 鍼灸院って、どんな症状ならかかっていいんですか?
この質問は予想外でしたが、実はとても本質的なテーマです。
医師・一般市民から見る「鍼灸」の現状◆ 医師からみると、
「この鍼灸院は何が得意なのか?」が判断しづらい。
鍼灸は自由診療であることが多く、初診の流れ・費用・適応範囲・安全性の基準が医療機関のように統一されているわけではなく、医師からすると「どのような患者が鍼灸の適応で、どの段階で鍼灸が入り得るのか」が不透明になりやすいとも感じます。
◆ 一般市民も、
「どこに行っても同じ?」「どこが信頼できるの?」
という迷いが生じやすく、整体・マッサージとの違いも見えにくい状況です。
これは、鍼灸の”入り口”が不明瞭であることが問題点として挙げられ、
どんな症状のときに鍼灸に行けばいいのか?
整体・マッサージと何が違うのか?
鍼灸は医療とどう関係するのか?
これらが一般の人にも医師にも「見えにくい」という課題がありそうです。
では、どんな症状なら鍼灸に行けばいいのか?
私は、次のような「トリアージ」の目安を推進しています。
✔︎ 鍼灸 × 医療のトリアージ(目安)
■ 原発性疾患 ➝ まず医療機関へ
原因が明確な疾患(感染症、外傷、急性症状など)は医療の領域です。
■ 二次的な不調 ➝ 鍼灸の特異領域
例:不眠、自律神経の乱れ、慢性的な痛み・不調、更年期に伴う諸症状 など
“病名はつかないけれど生活に支障がある状態”は鍼灸が得意とするところです。
✔︎ フラッグによる判断
🔴 Red flags ➝ 「まず医療機関を受診すべき」サイン
ここは迷わず受診。
🟡 Yellow flags ➝ “注意が必要だが、鍼灸との併用は可能”
医師と鍼灸師が並走して経過を追うイメージです。
🟢 Green flags ➝ 器質的な問題がなく、“生活の質(QOL)が下がっている状態”
鍼灸単独でも十分に対応できます。
A. 結論から言うと、鍼灸は病名がつかない不調や日常で感じる違和感にも向いています。
たとえば、
最近寝つきが悪い、めまいが続く、肩が重い、疲れやすい、なんとなく不安、気持ちが落ち着かない、季節の変わり目がつらい……。
病院に行くほどではないけれど、生活の質(QOL)が下がっているときに、鍼灸は大きな力を発揮します。
もちろん、急に症状が悪化したり、明らかな“病気のサイン”があるときは、まず医療機関が優先です。そのうえで、検査に異常がないのに続く不眠や自律神経の乱れ、慢性的な痛みなどは、鍼灸の得意分野です。
私は、鍼灸がもっと日常の中にあるものになれば良いと考えています。
「最近よく眠れない」「なんだか胃腸の不調が続く」「季節の変わり目で自律神経が乱れている」そんな理由で訪れていただいて構いません。
Q. 鍼灸では「なにができるのか?」
これも重要なテーマです。
鍼灸って、なにができるの?鍼灸は「リラクゼーション」や「肩こりのケア」だけでなく、医学的にも多面的な作用をもつ治療法だと私は考えています・
以下の4つが、鍼灸が本来発揮できる主要な役割です。
● 1. 症状軽減(症状そのものへの効果)
研究で効果が示されている症状を一部提示
・不眠症:入眠改善、中途覚醒改善
・慢性痛:腰痛、肩痛、頭痛、変形性関節症
・自律神経症状:動悸、疲労、倦怠感
・精神心理症状:不安、軽度うつ、不定愁訴
・耳鼻科領域:耳鳴り、めまい、咽頭違和感
・女性領域:更年期症状、月経痛
● 2. 身体機能の改善(調整・回復)
・交感神経・副交感神経のバランス改善
・血流改善
・筋緊張緩和
・抗炎症作用
・睡眠の質向上
・ストレス反応の低減(HPA axis) など
● 3. 生活の質(QOL)の改善
睡眠や活動性、気分、痛み、日常生活の満足度など鍼灸治療によって複合的な改善をもたらし「不定愁訴」への対応が特に得意
● 4. 医療の補助療法(併用の相乗効果)
たとえば、
・更年期におけるホルモン補充療法の併用
・不眠症に対する薬物療法との併用
・うつ病や不安障害などに対する薬物療法との併用
・顔面神経麻痺の後遺症の治療 など
鍼灸は標準治療と併用して介入することができ、アンメットニーズにも対応することが期待できます。
A. 鍼灸は、症状改善・身体機能の改善・QOL向上・医療との併用・不定愁訴への対応など幅広く対応することができます。
また、鍼灸師が取り組むべき”課題”についても見えてきました。
それは、
1. 鍼灸師は“資格は同じでも専門性がまったく違う”という構造問題
婦人科、精神科、整形外科、耳鼻科領域など鍼灸師個々の興味で専門分野が分かれています。しかしその専門性は外から見ると”わかりにくい”のが現状です。
→ 医師から見ると「この鍼灸院が何に強いのか?」が全くわからない。
→ 鍼灸師同士でさえ把握できていない。
2. 卒後研修・標準化された臨床教育が存在しない
医学では当たり前の“卒後研修・専門医制度”が鍼灸にはありません。知識・技術・臨床推論は個々人の努力に依存し、結果として「質のばらつきが大きい」というのが課題です。
→ 医師が紹介を躊躇する構造が続く
3. 医師 → 鍼灸師の紹介ルートが制度化されていない
医師が紹介する際に必要な要素は本来、
●その分野に強い鍼灸師であること
●一定の安全性・質が担保されていること
●フィードバック(報告)が返ってくること
だが、現在はどれも可視化されていません。
4. 鍼灸のエビデンスが発信されていない
近年、鍼灸研究は世界的にも活発に行われ、主観的・客観的な評価によってもその効果の裏付けるような研究は多数存在します。しかし、鍼灸師自身もそのエビデンスについて”知らない”ことが多く、病態・鑑別・Red flags・メカニズム・治療戦略などを医療者の言語でも話せる能力が重要です(共通言語の獲得)。
これらの課題に対して、構造さえ作れれば、質の底上げと連携促進が加速度的に進むと思います。
Q. 鍼灸院って、鍼灸接骨院や鍼灸マッサージなど様々ありますよね?
この質問も重要です。
たしかに、"鍼灸院の種類"が多様にあり、違いが外から判断できません。
どんな鍼灸院に送ればいいの?◆ 医師は次のような施設の違いを判断しにくい構造:
鍼灸院、鍼灸接骨院、鍼灸マッサージ院
整骨院併設の鍼灸、保険施術も取り扱う鍼灸、自由診療がメインの鍼灸
医師から見ると、
「どこに送れば適切なケアが受けられるのか?」という情報が圧倒的に不足しているように感じます。
→ 医師は“質だけでなく「適切な鍼灸院の種類」すら判別できない”
→ 結果、紹介をためらう。
私の考え
鍼灸院が多様であること自体は、本来それぞれの地域や患者さんのニーズに応えてきた結果でもあります。しかし、その違いが外から見えないままでは、医師にとっても一般の方にとっても選択が非常に難しくなります。
結局のところ、医師が安心して患者さんを紹介できるかどうかは、施設の名称よりも 「その鍼灸師がどんな人で、どのような臨床をしているのか」 にかかっていると私は思います。だからこそ、これからの時代は“顔の見える関係性” や”鍼灸師の可視化”が何より重要になると感じています。






