Research
現代科学が解き明かす
「鍼灸」とは?
鍼灸を受けたことがある人の多くが、「なんだか調子がいい」「気持ちが落ち着く」「眠りが深くなる」など、言葉にしづらい“いい感じ”を実感します。
「鍼灸って、なんかいいよね。」という“体感”には、実は現代科学でも少しずつ解明されつつある根拠があります。


我々、鍼灸師が用いるのは、「鍼」と「お灸」。
どちらも経穴に刺激を与えることで、からだ本来の力(自然治癒力)を引き出します。
「ツボってなんだろう」「なんで効くんだろう」と調べてみました。
Q. ツボってなんだろう?
実は「ツボ(経穴)」は、“昔から伝わる不思議なポイント”ではありません。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“Acupuncture points can be identified as cutaneous neurogenic inflammatory spots”
この論文が示しているのは、体の不調 → 特定の皮膚にサインが現れる → そこがツボとなり、治療点にもなるということなのです。

Q. ツボって、なんで効くの?
ツボを刺激すると、身体が自ら治ろうとする反応が起こります。最近の研究では次のような仕組みが分かってきました。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal-adrenal axis”
この論文が示しているのは、「ツボが効く」のは気のせいではないということ。
ツボには体のセンサーが密集しており、正しく刺激すれば本当に身体が反応し、治癒が促されるという仕組みが、いま科学によって明らかになりつつあります。

鍼治療は、免疫にも働きかける。
私たちが普段おこなっている鍼治療。その局所的な刺激が、実は全身の免疫バランスに影響しているかもしれない。そんな可能性を示す、大規模な文献レビューがあります。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“Changes of local microenvironment and systemic immunity after acupuncture stimulation during inflammation: A literature review of animal studies”
この論文が示しているのは、鍼刺激が起こす身体の変化は、単なる「局所の血流改善」ではないということ。神経・免疫・内分泌のネットワークを介して、全身レベルの抗炎症作用が引き出されるという点です。

Q. 結局、ツボってなんなの?
昔の鍼灸師は、ツボを「身体が教えてくれる反応点」として捉えていました。 そして現代科学は、この“直感的・経験的な知”を、多角的な視点から再構築しはじめています。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“Advancing the Understanding of Acupoint Sensitization and Plasticity Through Cutaneous C-Nociceptors”
この論文が示すのは、ツボとは、身体の状態や病態に応じて皮膚に“出現する反応点”であり、治療効果を引き出す神経・免疫・内分泌ネットワークの入口で、その状態を鍼灸師が見極めることで回復を促すことができます。

Q. なんでツボに鍼を刺すと効くの?
その答えは、ツボが体の状態や病気のときに身体に出てくる“反応点”だからです。
たとえば、過敏性腸症候群(IBS)という、検査では異常が出ないのに お腹の調子が乱れてしまう疾患を用いた基礎研究があります。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“Modulation of colonic function in irritable bowel syndrome rats by electroacupuncture at ST25 and the neurobiological links between ST25 and the colon”
この研究は、ST25(天枢)は、IBSや便秘・下痢の鍼治療で頻用されてきましたが、今回の研究はその伝統的な知見がIBSの症状を軽減させ、さらに神経科学的な根拠を与えました。

そして、伝統と現代科学の融合。
「鍼って、なんかいいよね」という、言葉にはならないけれど確かに感じる “実感”
昔の鍼灸師たちは、それをとても大切にしていました。
たとえば不眠の患者さんをみたとき、「百会・神門・三陰交あたりに反応が出やすいな」「ここを触ると硬い・冷たい・痛がる」 といった身体のサインを丁寧に感じ取りながら、ツボを選んでいました。
こうした臨床経験が積み重なって、「不眠には〇〇のツボがよく使われる」という伝統的な配穴が形づくられてきました。
そして今。fMRI や現代科学の進歩によって、かつての“経験知”が 科学的に意味のある選択だったことが分かりはじめています。
このことを裏づけているのが、次の論文です:“The increased functional connectivity between the locus coeruleus and supramarginal gyrus in insomnia disorder with acupuncture modulation”
この研究が示しているのは、鍼灸が「なんとなく効く」のではなく、 青斑核と縁上回という脳のネットワークを再構築することが、 客観的に確認されたという事実です。
つまり、伝統的なツボ選び(経験則)が、 現代神経科学でも正当化されつつあるということです。




(まとめ)
鍼灸って、いいよね。
1. ツボは身体の状態を反映する
かつては経験的に「なんとなくここが効く」とされてきたツボの場所。しかし最新の研究では、身体に不調があると皮膚に「神経原性炎症スポット」が現れやすいことが示されました。その場所は、古くから伝えられてきた経穴と約70%が一致しています。
つまりツボとは、からだの異常を反映して“現れる”機能的な点であることがわかってきたのです。
2. ツボの刺激は、全身に作用する
ツボを刺激すると、末梢神経→脊髄→内臓や中枢神経に情報が伝わり、身体機能に影響を及ぼします。
これは「体性-内臓反射」と呼ばれる生理学的反応で、
例えば:
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ST25(天枢)への刺激が結腸の運動機能を改善しました(IBSモデル)
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足三里刺激が迷走神経―副腎軸を介して抗炎症効果を引き出しました
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また、鍼刺激により脳の機能的な異常(fMRIで測定可能)が変化し、不眠などの症状改善にもつながっています。
3. 感覚神経(C線維)の可塑性が、ツボの“効く”メカニズムに関係
「ツボが出現する」とは、感覚神経が感作(過敏化)されること。病態により、ある皮膚領域の感覚神経が活性化し、そこに鍼刺激を加えると、通常よりも大きな神経反応が起こるようになります。
これが、「病気のときには〇〇のツボが効く」とされてきた経験知の科学的裏付けです。
4. 鍼灸は、「なんとなく効く」から「こういう仕組みで効く」へ
昔の鍼灸師たちが感覚的に使ってきた「ここに鍼を刺すとよくなる」という知恵は、現代科学により神経、免疫、中枢系レベルでの効果機序が明らかになりつつあります。これからの研究に期待したいですね。

