Acupuncturist
地域における鍼灸師の役割とは
検査に異常はないが
体調が優れない方

治療を受けたのに
症状が残っている方

現在の治療で十分な
効果が得られない方

現在の治療と併用して
治療効果を高めたい方


図1. 鍼灸の文献数(2024年5月現在でPubMedで"Acupuncture"と検索)
● 「診鍼連携」とは?
当院では、この課題に対応するために『診鍼連携』を推進しています。
これは、医療機関と鍼灸院が相互に情報を共有しながら、患者さんにとって効果的な治療を提供できるよう協力する仕組みです。
-
医師から鍼灸院への紹介
-
鍼灸院から医師への施術報告
この双方向のやり取りを通じ、患者さんの治療経過を安心して見守ることが可能になります。
● 実際の取り組み事例
-
精神科医療での分野
現在、地域全体で患者さんを支える仕組み(鍼灸師 ⇄ 精神科医をつなぐネットワーク)として、APネットワークが構築されつつあります。
🔽 [APネットワーク ➡ Click👆]
-
がん治療中・治療後の鍼灸治療
当院では、がん患者さんに鍼灸を導入する際に必要な情報を整理した紹介・連携用の資料を作成し、運用を試みています。医師・看護師の方々が紹介しやすく、また患者さん自身も安心して受診できるよう工夫しています。
🔽 [がん治療と鍼灸 ➡ Click👆]
📝【2017〜2022年 鍼治療SR/MAの包括的レビューまとめ】
➤ Moritz Hempen, Josef Hummelsberger, Complementary Therapies in Medicine, 2025
🔍 分析対象
-
対象期間:2017年~2022年発表の862件のSR/MA
-
収集・評価対象条件:PubMed 検索により“acupuncture”を含むSRおよびメタアナリシスを抽出し、184疾患に分類
-
評価基準:各SR/MAをレビューの質(QoR)、データの質(QoD)、エビデンスの質(QoE)で評価
🔹 以下の4カテゴリへ分類
-
Positive Effect(明確な効果)
-
Potentially Positive Evidence(効果の可能性あり)
-
Insufficient/Unclear Evidence(不十分・不明瞭)
-
No Evidence of Effect(効果なし)
主なハイライト
-
対象期間中、鍼治療に関するエビデンスの「量」と「質」はともに大きく向上しました。
-
10の疾患において明確な効果(Positive Effect)が確認され、82の疾患において効果の可能性(Potentially Positive Evidence)が示唆されました。
-
一方、86の疾患ではエビデンスが不十分、6疾患では効果なしと評価されました。
-
総じて、鍼治療は安全性が高く、多くの疾患領域で臨床的検討に値すると結論づけられています。

1️⃣ Clear Positive Effect:10件
-
慢性腰痛
-
変形性膝関節症
-
緊張型頭痛
-
片頭痛
-
術後の吐き気・嘔吐(PONV)
-
がん関連疲労(CRF)
-
更年期障害
-
女性不妊(IVF補助)
-
慢性前立腺炎 / 慢性骨盤痛症候群
-
肩痛・肩関節周囲炎
2️⃣ Potentially Positive Evidence:82件
※「効果が期待されるが、エビデンスの質や数が不十分、または相反するデータが存在する」疾患群です。
🔹 精神・神経領域
-
不眠症、うつ病、不安障害、線維筋痛症、BPSD(認知症周辺症状)、神経障害性疼痛 など
🔹 婦人科・泌尿器領域
-
月経困難症、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、更年期障害、尿失禁・過活動膀胱
🔹 消化器内科領域
-
IBS(過敏性腸症候群)、便秘、機能性消化不良、悪心、逆流性食道炎(GERD)
🔹 運動器・整形外科領域
-
頸部痛、肩こり、テニス肘、顎関節症、急性痛(術後痛など)
🔹 呼吸器・アレルギー領域
-
アレルギー性鼻炎、喘息(補助療法として)、慢性咳嗽
➡︎ これらは効果が示唆されつつも「RCT数不足」「バイアスリスク」「プロトコル非一貫性」など課題が残る。
3️⃣ Inconclusive Evidence:86件
※「現時点では結論を出すには情報が不十分」な領域です。
-
例:脳卒中後遺症改善、パーキンソン病、認知症、心血管疾患(高血圧予防など)、COPD、乳児疝痛、慢性疲労症候群 など
➡︎ 今後の大規模・質の高いRCTの実施が必要。
4️⃣ No Evidence of Effect:6件
「効果が認められなかった疾患」
-
禁煙補助、高血圧、パーキンソン病運動症状、COPD、脳卒中後ADL、心血管疾患予防
➡︎ 標準治療優先とするべきと明記。
🔍 総括(Summary)
1. 「エビデンスのある疾患」と「未確立な領域」が明確化された
-
鍼灸は特定の疾患群では「明確な効果あり」と評価されました。
-
一方で、精神疾患や消化器・婦人科領域は「有望だがエビデンスがまだ不十分」という「可能性段階」にとどまるものが多かったです。
-
さらに、脳血管疾患、認知症、COPDなどでは「判断保留」とされ、一部では「効果なし」と結論されたものも示されました。
2. エビデンスの「質と量」の問題も依然残る
-
多くのSR/MAが「質の低いRCT」「症例数不足」「非盲検」など方法論的限界を抱えると指摘されています。
-
これが「Potentially Positive」や「Inconclusive」に多く分類された理由とされています。
-
今後、質の高い臨床研究の蓄積が不可欠であると、改めて強調されています。


