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日本疼痛学会「認定鍼灸師」

日本疼痛学会「認定鍼灸師」と

慢性疼痛診療ガイドライン(2021年版)

 『慢性疼痛診療ガイドライン』(2021年版)において、初めて「鍼灸治療」が明示的に取り上げられました。

👉 CQ:「鍼灸治療は慢性疼痛に有用か?」


🔸 推奨度:2(弱)
🔸 エビデンス総体の総括:C(低い)


 鍼灸が科学的な評価の対象として、正式に認識されるようになった点は大きな一歩といえます。

 このガイドラインには・・・日本疼痛学会、日本ペインクリニック学会、そして全日本鍼灸学会など慢性疼痛に関わる10の関連学会が参加して作成されました。

📖 慢性疼痛診療ガイドラインのPDF👇
https://jhsnet.net/pdf/totsu_guideline_jp.pdf

 そして、その慢性疼痛に関わる関連学会の『
日本疼痛学会』が主導して令和7年度より鍼灸師の認定制度を設ける運びとなりました。

 本稿では、診療ガイドラインが作成された流れについてと日本疼痛学会が定める「認定鍼灸師」について解説します。

 

診療ガイドラインが作成された流れ

1.委員会の立ち上げ

 『慢性疼痛診療ガイドライン』は、慢性疼痛に関わる10の学会が参加して作成されました。全日本鍼灸学会前学術部長である伊藤和憲先生が本ガイドライン作成の依頼を受け、全日本鍼灸学会として診療ガイドライン委員会が作成に携わりました。

 

2.CQとPICOの作成

 本ガイドラインにおけるクリニカル・クエスチョン(CQ)は、「鍼灸治療は慢性疼痛に有用か?」と設定されました。これに対するPICOは以下の通りです。

  • P(対象):慢性疼痛を有する18歳以上の患者(癌性疼痛および内臓痛は除外)

  • I(介入):鍼灸単独

  • C(対照):薬物療法単独または薬物療法+通常ケア

  • O(アウトカム):疼痛、QOL、有害事象

3.論文検索とエビデンス評価

 2のPICOに基づいて論文検索を行った結果、1339本がヒットし、タイトル・抄録・本文を精査した上で、条件に合致した4本の論文を用いてシステマティックレビュー(SR)を実施しました。

 対象となった疾患は以下の4つで、合計197名が含まれていました。

  1. 慢性頚部痛

  2. 慢性片頭痛

  3. 線維筋痛症

  4. 慢性前立腺・骨盤痛症候群

 アウトカム評価としては、疼痛に関して2本の論文が鍼治療群で有意な改善を認め、残り2本は有意差なしという結果でした。QOLについては1本が有意な改善、1本は有意差なし。有害事象に関しては明確な記載がある1本の論文で、介入群での副作用は6%、対照群では66%と報告されました。

 

 ただし、エビデンス全体としては以下のようなリスクが高いと評価されました。

  • 患者および術者の盲検化が困難であることによるバイアスリスク

  • 対象疾患が多岐にわたることによる非一貫性

  • サンプルサイズの小ささによる不精確さ

 これらの点を踏まえ、総合的に判断してエビデンスの強さはC(低い)と評価となりました。

日本疼痛学会とは?
 一般社団法人 日本疼痛学会(Japanese Association for the Study of Pain、略称 JASP)は、疼痛に関する研究と医療を推進する日本の学術団体です。設立は1979年で、2017年には一般社団法人として認定されています。
 基礎研究から臨床応用まで、幅広い専門家が所属し、「痛みの機序解明」や「痛み医療の質向上」に取り組んでいる組織です。そして、国際組織・International Association for the Study of Pain(IASP)の日本チャプターとして、国際的に痛み研究を展開しています。


日本疼痛学会「認定鍼灸師」制度の背景は?
 鍼灸師の参入を積極的に推し進めているのが、本学会の理事を務めておられる伊藤和憲先生です。伊藤先生は、先にも触れたとおり、『慢性疼痛診療ガイドライン』の作成依頼を受けた方でもあります。

 そして、このガイドラインには、鍼灸治療が「推奨度2」と明記されており、これはエビデンスに基づいて鍼灸治療に一定の有効性が認められたことを意味しています。

 つまり、今後は慢性疼痛を抱える患者さんに対して、鍼灸治療が医師から紹介される機会が増えていくことが予想されます。しかしながら、現時点では「どの鍼灸師と連携すればよいのか」という判断基準が医師側にとって明確ではないという課題があります。これを喫緊の課題と考え、鍼灸師の専門性や対応力を可視化し、医師と鍼灸師が連携できる体制を整備しておくことが急務であると考えられます。

 もちろん、この「認定鍼灸師」という制度については、さまざまな意見があることと思います。
 日々臨床で努力している鍼灸師が正当に評価されにくくなってしまう可能性や、「認定鍼灸師」でなければ医師との連携ができない、あるいは、患者さんが「認定がない=効果がない」と誤って認識してしまうリスクも考えられます。

 それでもなお、個人の努力だけでは変えられない「社会全体の鍼灸観」を変える可能性を持つ制度であることに大きな意義があると私は考えています。そのため、私自身もこの制度に賛同し、ぜひとも認定鍼灸師の取得を目指したいと考えています。

日本疼痛学会「認定鍼灸師」になるためには?

 ①日本疼痛学会の会員であること、②一般財団法人日本いたみ財団が実施する試験に合格し合格所を取得することが条件となりそうです。そのほかにも所属年数や取得単位などの項目もあるかもしれないので、随時チェックする必要がありそうです。

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