顔面神経麻痺の評価と鍼治療
古典から現代へ―病態理解・評価・病期別治療
顔面神経麻痺に対する鍼治療を考えるうえでは、顔面の麻痺をどのような病態として捉え、どのように評価するかが重要です。
現在では、顔面神経の解剖や神経障害の程度を踏まえ、柳原法、ENoG、顔面筋の収縮反応などを用いて状態を評価し、発症からの期間や後遺症の有無に応じて治療方法を検討します。
一方、現在のような顔面神経という概念が存在しなかった時代にも、顔面の偏りや眼・口の動きの異常は古くから認識されていました。中国医学の古典には「口喎」「僻」「卒口僻」「口眼喎斜」などの記載がみられ、時代とともにその病態理解や治療の考え方も変化していきました。『霊枢』にも顔面の偏倚や口角の異常を示す記載が残されています。

古典医学では、現在の顔面神経麻痺に類似する顔面の偏りや眼・口の運動異常が「口眼喎斜」などの名称で記載されてきました。
ここではまず、現在の顔面神経麻痺に類似する症候を古典医学がどのように捉えてきたのかを、時代ごとにみていきます。
漢代―顔面の筋・経筋の異常として捉える
中国医学の基礎となる『黄帝内経』は、前漢から後漢にかけて成立したと考えられている医学古典です。
『黄帝内経・霊枢』の経筋篇では、現在の顔面神経麻痺に類似する「口眼喎斜」を、顔面に分布する足陽明の経筋の異常として説明しています。1)
当時は、寒によって筋が拘急すると頬が引かれて口が偏り、熱によって筋が弛緩すると十分に収縮できなくなると考えられていました。また、顔面の左右で筋の緊張状態が異なることによって、口や眼の偏りが生じるという理解もみられます。
もちろん、この時代には現在のような末梢神経や顔面神経という解剖学的概念はありません。しかし、顔面の異常を顔面筋の収縮・弛緩や左右の緊張差という観点から捉えていたことは興味深い点です。
隋代―風邪・寒邪によって急に生じる病態として捉える
隋代になると、顔面の偏りが「なぜ突然起こるのか」という病因に関する考え方がより明確になります。
巣元方らによる『諸病源候論』では、「風口喎候」として、風邪が足陽明・手太陽の経に入り、さらに寒に遭うことで筋が拘急し、頬が引かれると説明されています。2)
その結果として、口が偏る、言葉がうまく話せなくなる、眼を正常に動かしにくくなるといった症状が記載されています。
漢代では顔面の筋・経筋に生じた異常そのものが中心に説明されていましたが、隋代になると「風」「寒」といった外邪が身体に侵入することで急性に発症する病態として説明されるようになります。
この考え方は、その後長く続く「風に当たって顔が曲がる」「風邪が経絡に入り込んで口眼喎斜が起こる」といった伝統医学的な理解の基礎になったと考えられます。
宋代―「中風」の一症候として整理される
その後、口眼喎斜は長く「中風」の領域に分類されるようになります。
ここで注意が必要なのは、古典医学でいう「中風」と、現在の医学でいう「脳卒中」は同じ概念ではないという点です。
古典的な分類では、口眼喎斜を中心として意識障害を伴わない状態と、口眼喎斜に加えて意識障害や半身不随などを伴う状態が区別されていました。
現代医学の疾患名をそのまま対応させることはできませんが、顔面だけに症状が現れているのか、それとも全身的な神経症状を伴っているのかを区別しようとする臨床的な視点が存在していたことが分かります。
この点は現代の診療にも通じる部分があります。
現在でも、突然顔が動かしにくくなった場合には、Bell麻痺やHunt症候群などの末梢性顔面神経麻痺だけでなく、脳卒中などの中枢神経疾患との鑑別が重要です。
明・清代―急性期と慢性期では病態が異なるという考え方へ
さらに時代が進むと、口眼喎斜を一つの固定した病態として捉えるのではなく、発症からの時間経過によって状態が変化するという考え方が整理されていきます。
明・清代に蓄積された伝統医学の臨床理論では、おおむね「急性期」「回復期」「慢性期・後遺症期」のように、病期によって状態を分けて考えるようになりました。
急性期には、風寒・風熱などの外邪によって経絡の気血の流れが阻害された状態と考えられました。回復期には、邪気が残存し、気血が顔面を十分に栄養できていない状態と捉えられました。
さらに慢性期・後遺症期では、気血不足、瘀血、痰、経絡の阻滞などによって、顔面のこわばり、けいれん、萎縮などが残存すると考えられていました。
ここで重要なのは、これらの伝統医学的な病態そのものを現代医学の神経変性や病的共同運動と同一視することではありません。
むしろ、「発症直後の患者さんと、数か月経過して後遺症が残っている患者さんでは状態が異なる」という時間軸の考え方が形成されていた点に注目できます。
これは、現在の顔面神経麻痺に対する治療でも重要な視点です。急性期には麻痺の回復が大きな課題となりますが、慢性期には拘縮、こわばり、病的共同運動などが主な問題となる場合があります。
つまり、病態の説明は大きく変化しても、「病期によって治療目標を変える」という臨床的な発想には共通する部分があります。
伝統的な鍼灸治療はどのように行われてきたのか
口眼喎斜に対する伝統的な鍼灸治療は、大きく3つの考え方に整理できます。
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経絡・経筋に基づいて経穴を選ぶ
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症状が現れている顔面の部位に対して局所的に経穴を選ぶ
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顔面筋の走行や症状の広がりを意識して刺鍼する
特に、顔面に分布する足陽明の経筋や陽経が重視されてきました。
口角や頬部の異常に対しては地倉、頰車、下関、水溝、承漿など、眼瞼閉鎖や前額部の異常に対しては攢竹、陽白、魚腰、四白、太陽、睛明などが用いられてきました。さらに、鼻唇溝や鼻翼周囲には迎香や四白、耳介後部には翳風、頸部には風池、遠隔部には合谷などが用いられてきました。
また、「透刺」と呼ばれる刺鍼方法も行われてきました。
これは、一つの刺入点から隣接する経穴や筋の方向へ鍼を進める方法で、たとえば地倉から頰車、陽白から魚腰、攢竹から睛明、迎香から四白などの方向へ刺鍼する方法です。
こうした方法によって、口輪筋、頬筋、眼輪筋などが存在する領域を広く刺激するという考え方が用いられてきました。
古典医学と現代医学は分けて考える必要があります
ここまで紹介したように、顔面神経麻痺に類似する症状は古くから認識され、その病態理解は時代とともに変化してきました。
漢代には筋・経筋の拘急や弛緩として捉えられ、隋代には風邪・寒邪による急性病態として説明され、さらに中風の一症候として整理されました。その後は、発症直後と慢性期では状態が異なるという時間的な考え方も形成されていきます。
一方で、これらの古典的な病態概念と、現在のBell麻痺やHunt症候群などをそのまま対応させることはできません。
現在では、顔面神経の解剖や生理、神経障害の程度、神経変性、再生過程、病的共同運動などについて医学的な評価が行われています。
したがって、古典医学は「現在の顔面神経麻痺の原因を説明するもの」として扱うのではなく、「顔面の麻痺という症候を、各時代の医学がどのように観察し、理解し、治療してきたのか」という歴史的な背景として捉えるのが適切です。
古典から現代へ―顔面神経麻痺は「評価する疾患」へ
現代の顔面神経麻痺では、どの程度顔面を動かすことができるのか、顔面神経の機能がどの程度残っているのか、完全麻痺なのか不全麻痺なのか、回復途中に病的共同運動や拘縮が生じていないかなど、複数の視点から状態を評価します。そして、その評価結果を治療方針に反映させます。3)
顔面神経麻痺に対する鍼治療についても同様で、診断名だけを見て同じ方法で治療するのではなく、病期と重症度を評価したうえで刺激方法を検討することが重要です。
当院では、そのための評価として主に、
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柳原法による顔面運動の評価
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医療機関で行われるENoGによる神経機能の評価
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鍼通電刺激に対するTwitch反応の確認
などを参考にしています。
それぞれ見ているものは同じではありません。
柳原法は「現在、顔がどの程度動いているか」を評価します。ENoGは、顔面神経の機能がどの程度保たれているかを判断するための検査です。Twitchは、鍼通電刺激に対して表情筋がどのように収縮するかを確認する方法です。
一つの評価だけで治療方針や予後を決めるのではなく、それぞれの情報を組み合わせながら顔面神経の状態を把握していきます。
1. 柳原法
柳原法は、日本で広く用いられている顔面神経麻痺の評価方法です。安静時の左右対称性1項目と、額のしわ寄せ、閉眼、鼻翼の動き、頬を膨らませる、口笛、歯を見せるなど9項目の表情運動を評価し、合計40点で顔面運動の状態を数値化します。4)
各項目は、4点「ほぼ正常」、2点「部分麻痺」、0点「高度麻痺」の3段階で評価します。合計点が高いほど顔面運動が保たれており、低いほど麻痺が強いことを示します。J-STAGE
発症早期のBell麻痺654例を対象とした報告では、柳原法スコアを22点以上「軽症」、12~20点「中等症」、10点以下「重症」に分類しています。この分類では、6か月以内の治癒率は軽症99.3%、中等症95.1%、重症80.2%で、初期の麻痺が強いほど回復に時間を要する傾向が示されています。5)

柳原法(40点法)で評価する10項目。安静時の左右差に加え、額のしわ寄せ、軽い閉眼、強閉眼、片目つぶり、鼻翼運動、頬を膨らませる、口笛、歯を見せる、口をへの字に曲げる動作を評価し、顔面神経麻痺の程度や経時的な変化を確認します
2. ENoG
ENoGはElectroneurographyの略で、日本語では神経電図検査などと呼ばれます。
顔面神経を電気刺激し、その刺激によって表情筋から得られる複合筋活動電位の大きさを、健側と患側で比較します。一般的には、健側の反応を100%としたとき、患側にどの程度の反応が残っているかをENoG値として示します。6)
たとえば、患側の反応が健側の30%であればENoG値は30%となります。数値が低いほど、機能している顔面神経線維が少ない可能性を示します。

ENoG(神経電図検査)の模式図。顔面神経を電気刺激し、表情筋から得られる複合筋活動電位を健側と患側で比較することで、顔面神経機能の残存程度を評価します
ENoGはいつ測定するのか
ENoGでは測定時期も重要です。
顔面神経が障害された直後には、末梢側まで神経変性が十分に進んでいないため、発症直後のENoG値だけでは障害程度を正確に反映しない場合があります。Waller変性が刺激部位より末梢まで到達するには72時間以上を要し、一方で発症2週以降になると神経再生の影響を受けるため、予後評価を目的とする場合にはおおむね発症4日目以降から2週以内が適切とされています。
実臨床では、発症7~14日頃に測定した研究も多くあります。J-STAGE
ENoG値はどのように解釈するのか
ENoG値が高いほど、顔面神経機能が比較的保たれていると考えます。一方、値が著しく低い場合には高度な軸索変性を伴っている可能性があります。
日本の急性期診療に関する解説では、柳原法10点以下かつENoG値10%以下の症例は高度麻痺として扱われ、追加治療を検討する際の重要な指標となっています。
また、110例を対象とした研究では、ENoG値が10%を超える症例では回復率が高く、0~10%では回復率が低下する傾向が報告されています。ただし、ENoG値だけで個々の患者さんの転帰を確定できるわけではありません。7)
3. Twitch―鍼通電刺激に対する表情筋の収縮反応
当院では、必要に応じて顔面神経を目標とした鍼通電刺激を行い、表情筋の収縮反応を確認します。この一過性の筋収縮をTwitchと表現しています。
具体的には、聴会・下関付近に置鍼し、1Hzの鍼通電刺激を行い、顔面の表情筋がどの程度収縮するかを数秒間確認します。

顔面神経と聴会・下関付近の位置関係を示した模式図。聴会・下関へ置鍼し、1 Hzの鍼通電刺激を行って、表情筋に生じるTwitch(筋収縮反応)の程度を数秒間確認します
Horibeらは、この反応をfacial muscle contraction response(FMCR)として評価し、急性期の末梢性顔面神経麻痺患者90例についてENoG値との関連を検討しました。
明瞭な反応を認めた65例ではENoG値の中央値が26.6%だったのに対し、反応が減弱していた16例では2.45%、反応がみられなかった9例では2.00%でした。つまり、Twitchが明瞭な場合には顔面神経機能が比較的保たれている可能性があり、減弱または消失している場合には高度な神経変性を伴っている可能性が示されています。8)
重要なのは、一つの結果だけで病態や予後を判断しないことです。
たとえば、Twitchが明瞭であっても柳原法が10点以下であれば、顔面運動としては高度麻痺です。逆に、Twitchが減弱・消失している場合には、柳原法の点数だけでは分からない高度な神経障害を伴っている可能性も考慮します。
堀部らは、Twitch反応が明瞭な場合には柳原法を組み合わせて評価し、10点以下では完全麻痺、12点以上では不全麻痺として予後との関連を検討しています。9)

Twitch反応と柳原法を組み合わせた予後評価の考え方。Twitchが減弱または認められない場合は高度な神経障害の可能性を考慮し、Twitchが明瞭な場合には柳原法で評価します。柳原法12点以上では不全麻痺、10点以下では完全麻痺として整理し、予後との関連を検討しています
当院における顔面神経麻痺の鍼治療
ここまで、柳原法、ENoG、Twitchについて説明してきました。当院では、これらの評価を参考にしながら、発症からの期間、麻痺の程度、Twitch反応、後遺症の有無などから治療方法を検討しています。
以下は、当院で用いている臨床上の治療フローです。

当院における顔面神経麻痺の鍼治療フローチャート
まず「病期」と「重症度」を確認する
顔面神経麻痺の患者さんが来院した際には、最初に発症からどの程度経過しているかを確認します。
同じ顔面神経麻痺であっても、発症直後と、顔面神経の回復が始まった時期、さらに病的共同運動や拘縮などが残った慢性期では、治療上の課題が異なるためです。
また、柳原法による顔面運動の評価、医療機関で実施されたENoG、Twitch反応などから、顔面神経の状態をできる限り把握します。
そのうえで、大きく「発症後2週間以内」「2週間以降の回復期」「慢性期・後遺症期」に分けて治療方法を考えています。
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発症後2週間以内―置鍼を中心に行う
発症後2週間以内は、まず耳鼻咽喉科などで診断を受け、ステロイドなど必要な標準治療を開始していることが前提となります。
当院では、この時期に聴会・下関付近へ置鍼し、1 Hzの鍼通電刺激を短時間行ってTwitch反応を確認します。Twitchは治療そのものを目的とした長時間の刺激ではなく、表情筋の収縮反応を確認するために数秒間観察します。
その後の施術は、顔面部への置鍼を中心とします。
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発症2週間以降―Twitch反応によって刺激方法を検討する
発症から2週間以上が経過した回復期では、再び聴会・下関付近への鍼通電刺激によってTwitch反応を確認します。
ここでは、Twitchが「あり・減弱」している場合と、「消失」している場合で治療方法を分けています。
Twitchが認められる、または減弱している場合
Twitchが認められる、あるいは減弱していても表情筋の収縮反応が確認できる場合には、顔面神経を目標とした鍼通電刺激を行います。
当院で用いている刺激条件は、聴会―下関付近から顔面神経を目標とする、1 Hz、連続波、10~15分という方法です。
ここで重要なのは、顔面筋を強く収縮させることを目的としているのではなく、Twitch反応を確認したうえで顔面神経を目標とする刺激を選択している点です。
Twitchが消失している場合
一方、聴会・下関付近を刺激してもTwitchが認められない場合には、顔面神経を目標とした同じ刺激を一律に続けるのではなく、治療方法を変更します。
当院では、個々の表情筋に対する置鍼、または表情筋を個別に刺激する非同期の鍼通電刺激を検討します。鍼通電を行う場合には、50~100 Hzの断続波を用いる方法を採用しています。
つまり、顔面神経全体への刺激に対する反応が確認できない場合には、刺激対象を個々の表情筋へ切り替えるという考え方です。
なぜTwitchによって治療方法を分けるのか
Twitchは、鍼通電刺激によって誘発される表情筋の一過性収縮です。
Horibeらは、Twitchに相当するfacial muscle contraction response(FMCR)とENoG値の関係を検討しています。Twitchが明瞭であった症例ではENoG値の中央値が26.6%であったのに対し、反応が減弱した群では2.45%、反応がみられなかった群では2.00%でした。
この結果から、Twitch反応は顔面神経機能の状態を考える際の一つの参考情報になる可能性があります。
ただし、TwitchはENoGの代替検査ではなく、Twitchだけで神経障害の程度や予後を決定することもできません。そのため当院では、柳原法、ENoG、発症からの経過などと組み合わせて評価しています。
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慢性期・後遺症期―「麻痺」だけではなく後遺症を評価する
慢性期になると、治療の目的は急性期や回復期とは変わってきます。
顔面運動そのものは回復していても、顔面の拘縮、痙攣、こわばり、病的共同運動などが残ることがあります。たとえば、口を動かすと意図せず眼が閉じるといった病的共同運動は、麻痺が回復する過程で問題となる代表的な後遺症です。
そのため慢性期では、顔が「どの程度動くか」だけではなく、拘縮、痙攣、こわばり、病的共同運動などを確認します。当院では、これらの後遺症の軽減を目的とした鍼治療とセルフケアを組み合わせていきます。10)、11)
慢性期・後遺症を対象とした臨床研究でも、単純な麻痺の程度だけではなく、拘縮、こわばり、病的共同運動、QOLなどが評価項目として扱われるようになっています。
伝統的な配穴も重視しています
当院では、柳原法、ENoG、Twitchなどを参考に病期や重症度を評価し、鍼通電刺激の方法を検討する一方で、実際の配穴には伝統的な経絡・経穴の考え方も取り入れています。
顔面神経麻痺に類似する「口眼喎斜」では、古くから顔面に分布する経絡や経筋、症状が現れている部位に応じて経穴が選択されてきました。顔面部では、地倉、頰車、下関、陽白、攢竹、四白、迎香、翳風などが代表的です。
一方、伝統的な鍼灸では、症状がある顔面部だけに刺鍼するのではなく、その部位を通る経絡の流れを考え、手足など離れた部位の経穴を組み合わせる「遠隔取穴」も重視します。
顔面では足陽明経筋や陽明経との関連が重視されてきたため、手の陽明大腸経に属する合谷、足の陽明胃経に所属する足三里などを、顔面から離れた遠隔部の経穴として用いることがあります。
このように、伝統的な配穴では、
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症状が現れている顔面部の経穴
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顔面を走行する経絡・経筋上の経穴
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その経絡と関連する手足の遠隔部・末端の経穴
を組み合わせて考えます。
当院では、こうした経絡経穴の考え方をそのまま機械的に適用するのではなく、顔面神経や表情筋の解剖、病期、重症度、症状部位などと合わせて、患者さんごとに配穴を選択しています。
参考文献
1)『黄帝内経・霊枢』経筋篇(経筋第十三).
Wikisource
2)巣元方 等.『諸病源候論』巻一・風諸病上「風口喎候」.隋代.
参照先
3)栢森良二,堀部豪,粕谷大智.末梢性顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果と現状.全日本鍼灸学会雑誌.2023;73(1):7-26. doi:10.3777/jjsam.73.7.
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4)柳原尚明,西村宏子,陌間啓芳,ほか.顔面神経麻痺程度の判定基準に関する研究.日本耳鼻咽喉科学会会報.1977;80(8):799-805. doi:10.3950/jibiinkoka.80.799.
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5)Hato N, Fujiwara T, Gyo K, Yanagihara N. Yanagihara facial nerve grading system as a prognostic tool in Bell's palsy. Otol Neurotol. 2014;35(9):1669-1672. doi:10.1097/MAO.0000000000000468.
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7)南修司郎,新田清一,大石直樹,山下拓,和佐野浩一郎.末梢性顔面神経麻痺予後の検討―ENoGを中心に―.耳鼻咽喉科臨床.2008;101(6):435-439. doi:10.5631/jibirin.101.435.
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8)Horibe G, Itoh A, Yamaguchi S. Electroneurography Values Based on Degree of Facial Muscle Contraction Response to Electroacupuncture in Patients with Peripheral Facial Nerve Palsy: A Retrospective Study. Med Acupunct. 2023;35(6):305-310. doi:10.1089/acu.2023.0044.
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9)堀部豪,菊池友和,山口智.第43回日本顔面神経学会抄録集.2020.
10)Kwon HJ, Choi JY, Lee MS, Kim YS, Shin BC, Kim JI. Acupuncture for the sequelae of Bell's palsy: a randomized controlled trial. Trials. 2015;16:246. doi:10.1186/s13063-015-0777-z.
PubMed
PMC
11)Ertemoğlu Öksüz C, Kalaycıoğlu A, Uzun Ö, et al. The Efficacy of Acupuncture in the Treatment of Bell's Palsy Sequelae. J Acupunct Meridian Stud. 2019;12(4):122-130. doi:10.1016/j.jams.2019.03.001.
PubMed
このページを書いた人
PROFILE
監修
鍼灸師 松浦知史
全日本鍼灸学会認定鍼灸師
東京有明医療大学首席卒。福島県立医科大学会津医療センター研修。研修終了後は埼玉医科大学東洋医学科、ならびに同大学かわごえクリニックを経て、大慈松浦鍼灸院、神保町十河医院附属鍼灸院副院長。

