がん患者さんの症状に対する鍼治療の研究
― 2026年 Supportive Care in Cancer 掲載研究より
まずは結論
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がんの治療中や治療後には、痛み・疲れやすさ・眠りにくさ・不安・ほてり・手足のしびれなど、さまざまな症状があらわれることがあります。
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2026年に発表された研究では、2,000人以上のがん患者さんの外来データを解析した結果、鍼治療を受けた患者さんの多くでこれらの症状が改善していました。
特に、
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数回の治療を受けることで症状が改善する傾向
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不安やほてりは比較的早く変化が出やすい
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痛みや疲労なども継続治療で改善する可能性
が示されています。
ただし、この研究は実際の外来データを解析した研究であり、鍼治療だけが原因で改善したと断定できる研究ではありません。
それでも、がん患者さんの症状をやわらげる方法の一つとして、鍼治療が役立つ可能性が示された研究といえます。
研究の概要
この研究は、がん患者さんの症状に対する鍼治療の効果を調べた実臨床データ研究(real-world study)です。
対象となったのは、2015年から2022年までに鍼治療を受けた2,239名のがん患者です。
患者さんの多くは、乳がん・消化器がん・その他の固形がんなどの治療中または治療後の方でした。
患者さんが訴えていた主な症状は次の通りです。
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痛み
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睡眠の問題
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疲労
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ほてり(ホットフラッシュ)
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不安
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抗がん剤による手足のしびれ(末梢神経障害)
※これらの症状は、0〜10点の数値スケールで評価されました。
鍼治療の方法
研究で行われた鍼治療は、外来で行われる一般的な鍼治療に近い方法でした。
特徴は次の通りです。
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週1回程度の施術
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1回の施術で約30〜45分
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症状に応じて約18本程度の鍼
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鍼通電刺激は使用しない
※最大4人まで同時に治療を受けることができる外来体制で実施されました。
研究結果
鍼治療を受けた患者さんでは、次のような傾向がみられました。
🔹症状の改善
2回目の治療の時点で、すべての症状において統計学的な改善が確認されました。
さらに3回目の治療では、痛み・疲労・睡眠障害・不安・ほてり・末梢神経障害のすべてで、臨床的にも意味のある改善がみられました。

Clinical Response Rate(臨床反応率)
🔹症状改善の割合
改善した患者さんの割合は症状によって異なりますが、
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ほてり:約70%
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痛み:約56%
など、多くの患者さんで症状の軽減がみられました。

Clinical Response Rate(症状の変化の内訳)
🔹継続率
患者さんの83%が2回目の治療まで継続していました。
これは、がん患者さんに対する支持療法としては比較的高い継続率とされています。
この研究の意味
この研究は、鍼治療ががん患者さんの生活の質(QOL)を支える治療の一つになりうる可能性を示しています。
がん治療では、次のような症状が長く続くことがあります。
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抗がん剤によるしびれ
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ホルモン療法によるほてり
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慢性的な疲労
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不安や睡眠障害
こうした症状は、薬だけでは十分に改善しないことも少なくありません。
そのため現在、欧米のがんセンターでは、薬物療法に加えて鍼治療などの補完療法を取り入れる「統合医療」が広がりつつあります。
この研究も、その流れの中で行われたものです。
研究の限界
一方で、この研究にはいくつかの限界もあります。
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比較対象(鍼を受けていない患者群)がない
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1つの医療機関のデータである
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患者さんの多くが乳がんで女性が多い
そのため、すべてのがん患者さんに同じ結果が当てはまるとは限りません。
また、症状の改善には、自然経過・他の治療・心理的要因なども影響している可能性があります。
臨床的な解釈
この研究から読み取れる実際の臨床的ポイントは次の通りです。
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鍼治療は1回だけで判断するより、数回継続して評価する方がよい可能性
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不安やほてりは比較的早く改善することがある
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痛みや疲労は複数回の治療で変化がみられることがある
つまり、鍼治療は症状を完全に治す治療というより、生活の質を支える支持療法として位置づけられています。
参考文献
【関連記事】
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支持医療と鍼灸
└ がん医療における鍼灸の位置づけ
└ がん治療における鍼灸の役割
└ 鍼治療は役立つのか?
└ 症状マネジメントとしての鍼灸
└ がん疼痛
└ 乳房切除後疼痛症候群
└ 化学療法関連末梢神経障害
└ 倦怠感
└ 悪心・嘔吐
└ 口腔乾燥・唾液分泌低下
└ ホットフラッシュ
└ 睡眠障害・不安・抑うつ
└ 安全性と臨床判断
└ 鍼治療は安全か?
└ 患者理解とナラティブ
└ エビデンスと今後の課題
└ 症状別エビデンスの整理
└ 限界と未解決の課題
└ 今後の研究と臨床実装
このページを書いた人
PROFILE
監修
鍼灸師 松浦知史
東京有明医療大学主席卒。福島県立医科大学会津医療センター研修。研修終了後は埼玉医科大学東洋医学科、ならびに同大学かわごえクリニックを経て、大慈松浦鍼灸院、神保町十河医院附属鍼灸院副院長。

