鍼刺激による抗炎症作用とは? Nature Medicine 2014年の研究

NHKでも紹介された「鍼と免疫」の研究
2014年、Rafael Torres-Rosasらは、鍼通電刺激が全身の炎症反応にどのような影響を与えるのかを、マウスを用いて調べました。
この研究はNature Medicineに掲載され、NHK「フロンティアで会いましょう! 最新科学が解き明かす“東洋医学”のパワー!」でも紹介されています。
研究で注目されたのは、鍼の刺激が局所だけではなく、神経を介して免疫反応に影響する可能性です。
鍼通電刺激で炎症反応が抑えられた
研究では、強い全身炎症を起こしたマウス(敗血症を模したマウス)の足三里(ST36)に鍼通電刺激を行いました。
その結果、TNFやIL-6など、炎症に関係する複数のサイトカインが低下しました。さらに、坐骨神経や迷走神経を切断したり、副腎を摘出したりすると、この抗炎症作用がみられなくなりました。
このことから、足への刺激が神経を介して副腎へ伝わる経路が関係していると考えられました。
鍵となったのは「ドーパミン」
さらに研究を進めると、鍼通電刺激によって副腎からドーパミンが放出されることが分かりました。このドーパミンがD1受容体を介して免疫細胞に作用し、過剰な炎症反応を抑える可能性が示されました。

生存率にも違いがみられた
研究では、炎症物質だけでなく、敗血症モデルのマウスの生存率も調べています。
その結果、鍼通電刺激を行った群では、生存率の改善がみられました。この結果はNHKの番組でも紹介されています。

この研究が興味深いのは、「鍼をすると炎症が減った」というだけではなく、鍼通電刺激→ 神経系→ 副腎→ ドーパミン→ 免疫反応の調節という具体的な生体の仕組みを示したことです。
ただし、マウスを用いた基礎研究です
重要なのは、この研究はマウスを対象とした基礎研究だという点です。
この結果から「鍼で人の敗血症を治療できる」と結論づけることはできません。また、2014年の研究だけで、この神経回路のすべてが解明されたわけでもありません。
その後も研究は進み、2021年にはNature誌で、足三里付近への鍼通電刺激と迷走神経―副腎系をつなぐ神経回路について、さらに詳しい研究が報告されています。
2014年の研究は、鍼刺激を神経科学や免疫学の視点から理解する研究の流れを考えるうえで、重要な報告の一つです。
参考文献
Torres-Rosas R, Yehia G, Peña G, et al. Dopamine mediates vagal modulation of the immune system by electroacupuncture. Nature Medicine. 2014;20:291–295.
Nature Medicineで論文を確認するhttps://doi.org/10.1038/nm.3479


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