top of page

【鍼灸師向け】鍼灸院の施術タイムスケジュールを考える―無理なく外来を続けるために

執筆者の写真: 大慈松浦鍼灸院
大慈松浦鍼灸院
4 時間前
読了時間: 9分

鍼灸の勉強では、診察や経穴、刺鍼の方法に目が向きます。一方、実際の臨床では、「どのような時間配分で患者さんを診るか」も大切です。

問診から施術、着替え、会計までの流れを整理すると、予約間隔や1日に対応できる人数が見えてきます。患者さんをお待たせする時間や、自分が慌ただしくなる場面も分かります。

鍼灸院の施術タイムスケジュール

私も、再診時の各工程をタイムテーブルにして、予約の取り方を考えています。今回は、当院の例を紹介しながら、施術の時間配分について書いてみたいと思います。


名人たちの外来にも、運営の工夫があった

かつての鍼灸師たちも、ベッドの配置や施術者の動線を工夫していたようです。


岡田明三先生と篠原孝市先生の対談では、岡田先生が見学した岡部素道先生の治療院について、部屋を囲むように約10台のベッドが置かれ、岡部先生がその間を移動して施術していたと語られています。

また、医道の日本社の「第64回鍼灸経絡治療夏期大学レポート」では、治療院の規模や立地、患者層に合わせて、治療のスタイルが形成されたことが紹介されています。


名人の施術を学ぶときには、選穴や手技に注目しがちです。ただ、実際に多くの患者さんを診ていた背景には、こうした外来の工夫もあったことが分かります。


当院の再診は、60分を基本にしています

私の場合、再診時の流れを60分のタイムテーブルとして整理しています。おおよその時間配分が決まっていると、次に何をするか、別の患者さんにいつ対応できるかを見通しやすくなります。


表1.再診時の施術タイムテーブル(60分)

時間帯

内容

所要時間

0:00〜0:02

受付・着替え

2分

0:02〜0:05

経過の確認

3分

0:05〜0:13

仰臥位での刺鍼

8分

0:13〜0:28

置鍼(仰臥位)

15分

0:28〜0:30

抜鍼

2分

0:30〜0:38

伏臥位での刺鍼

8分

0:38〜0:48

置鍼(伏臥位)

10分

0:48〜0:51

着替え・会計

3分

0:51〜1:00

片づけ・記録など

9分

合計


60分

※時間は目安です。体位変換や伏臥位の抜鍼なども含め、患者さんの状態に応じて調整します。

患者さんの滞在時間と、施術者が直接対応する時間は異なります。

この表では、仰臥位と伏臥位の置鍼が合わせて25分あります。その間に、患者さんの様子を確認しながら、記録や別の患者さんへの対応を行います。

もちろん、置鍼中に呼ばれることもあります。25分をそのまま他の患者さんの施術に使えると計算するのではなく、必要な対応ができる余裕も含めて考えます。


時間配分を考えるときの6つのポイント

1.毎回の段取りを決めておく

経過の聞き方、病態の捉え方、選穴や刺激量の判断は、患者さんによって変わります。

一方、道具の準備や着替えの案内、会計、片づけは、毎回大きく変わるものではありません。

道具を置く場所や準備する順番が決まっていれば、その都度探したり、考えたりせずに済みます。当院でも、施術内容は個別に判断しながら、受付から施術後までの順序はおおむねそろえています。


2.施術時間と予約間隔を分けて考える

1人の基本工程が60分でも、予約を必ず60分ごとに取るとは限りません。置鍼中に別の患者さんへ対応することで、来院時刻をずらして予約を取ることもできます。

ただし、対応時間の合計だけでは、実際に回せるかどうかは分かりません。問診・刺鍼・抜鍼が重なると、その時間帯だけ忙しくなるからです。患者さんごとの工程を横に並べ、どこで対応が重なるかを確認します。


3.確認や説明に時間が必要な患者さんには、長めの枠を取る

表1は、通常の再診を想定しています。初診や症状が大きく変化した再診では、問診や再評価、患者説明に時間がかかります。

経過確認の3分も目安です。相談がある患者さんを、3分で切り上げるということではありません。あらかじめ時間が必要だと分かっている場合は、長めの枠を取るか、同じ時間帯の予約人数を調整します。


4.片づけ・記録を後回しにしない

当院では、最後の9分を片づけや施術記録などに充てています。施術の予定だけで予約を埋めてしまうと、こうした作業が昼休みや終業後に残ります。

また、記録や片づけをしている時間は休憩ではありません。複数の患者さんに対応していると、1人の施術が終わっても外来は続きます。休憩を取るには、予約を入れない時間を別に設ける必要があります。


5.ベッドが空いていても、予約を入れられるとは限らない

ベッドに空きがあっても、問診や刺鍼が重なれば、患者さんをお待たせすることになります。説明や体位変換の介助に時間がかかる場合もあります。

予約を取るときには、人数だけでなく、患者さんの組み合わせも確認します。時間を要する患者さんが続く枠では、受け入れる人数を減らすといった調整が必要です。


6.一日の終わりに、無理がなかったかを確認する

予定どおりに終われたか、記録が残っていないか、休憩が取れたか。翌日に疲労が残っていないかも、人数や予約間隔を見直す目安になります。

その日だけ何とか対応できても、毎日続けるとなれば話は別です。予約が多かった日の終わりに、何が負担だったのかを振り返ると、次の予約の取り方を調整しやすくなります。


東京と群馬では、予約の取り方を変えています

群馬では、1時間単位で2〜3人の予約をまとめて取っています。車での来院など、患者さんの来院スタイルや時間の使い方に合わせ、その枠内で順番を調整しています。

一方、東京では20分刻みで来院時刻をずらしています。到着や施術開始を分散し、待ち時間や施術者の負担を抑えることを意識しています。


表2.20分刻みで来院時刻をずらした施術の流れ

時間

Aさん

Bさん

Cさん

0:00

受付・着替え・経過確認

—

—

0:05

仰臥位刺鍼

—

—

0:10

仰臥位刺鍼

—

—

0:15

置鍼(仰臥位)

—

—

0:20

置鍼(仰臥位)

受付・着替え・経過確認

—

0:25

置鍼(仰臥位)

仰臥位刺鍼

—

0:30

伏臥位刺鍼

仰臥位刺鍼

—

0:35

伏臥位刺鍼

置鍼(仰臥位)

—

0:40

置鍼(伏臥位)

置鍼(仰臥位)

受付・着替え・経過確認

0:45

置鍼(伏臥位)

置鍼(仰臥位)

仰臥位刺鍼

0:50

着替え・会計

伏臥位刺鍼

仰臥位刺鍼

0:55

片づけ・記録など

伏臥位刺鍼

置鍼(仰臥位)

1:00

—

置鍼(伏臥位)

置鍼(仰臥位)

1:05

—

置鍼(伏臥位)

置鍼(仰臥位)

1:10

—

着替え・会計

伏臥位刺鍼

1:15

—

片づけ・記録など

伏臥位刺鍼

1:20

—

—

置鍼(伏臥位)

1:25

—

—

置鍼(伏臥位)

1:30

—

—

着替え・会計

1:35

—

—

片づけ・記録など

※表2は、3人の進行を5分刻みで示した概略です。表1の細かな時間を丸め、抜鍼・体位変換は省略しています。刺鍼が同じ行にある場面では順番に対応し、開始・終了時刻を調整します。


この表では、0:30にAさんとBさんの刺鍼が重なっています。実際には順番に対応するため、各工程は数分ずれることがあります。来院時刻をずらすだけでなく、その日の患者さんの状態に合わせて進めています。

また、20分刻みの予約を続ける場合は、1:00に次の患者さんが来院します。予約間隔を検討するときには、3人分だけでなく、その先まで並べて確認する必要があります。


施設によって、同じ方法では回せないこともある

東京と群馬では、来院の仕方に加えて、施設の条件も異なります。

待合室や更衣スペースが狭ければ、同じ時刻に何人も迎えるのは難しくなります。ベッド配置によって、施術者の移動距離や患者さんの様子の確認しやすさも変わります。受付スタッフがいなければ、施術の合間に電話や会計へ対応する時間も必要です。


同じ60分の施術でも、予約の取り方まで同じにできるとは限りません。当院でも、施術の基本工程をもとに、それぞれの施設で人数や来院時刻を調整しています。


小規模な鍼灸院だからこそ、無理のない設計を

私は、鍼灸師の個性や患者さんとのつながりを大切にしながら、道具やメニュー、固定費を必要な範囲に抑える、小規模な鍼灸院に可能性を感じています。


少人数の院では、施術者が休むと、その日の予約を変更しなければならないこともあります。自分にしか対応できない仕事が多いからこそ、疲労が続くような予約の取り方は避けたいと思っています。


若手の方も、まずは普段の施術を時間ごとに書き出してみてください。問診が長くなるのか、刺鍼に時間がかかるのか、それとも会計や片づけが重なるのか。慌ただしくなる箇所が分かれば、予約間隔や準備の方法を具体的に見直せます。こうして整理すると、今の設備や人数で、自分ができることと難しいことも見えてきます。


治療院を見学するときも、選穴や手技に加えて、予約間隔、ベッド配置、施術の順序、スタッフの役割分担まで見てみてください。それぞれがどう組み合わさって、外来が進んでいるのかを把握することが大切です。

そのうえで、「なぜ、この方法にしたのか?」を先生に聞いてみると、見学だけでは分からない工夫が見えてきます。 患者層や施設の条件、これまで困ったこと、施術で大切にしていることなど、その方法を選んだ理由があるはずです。自院に取り入れる際も、形だけでなく、そうした背景を知っておくと参考になります。


手技や設備も、時間と費用を含めて考える

施術方法を選ぶ際も、「効果が期待できるか」に加えて、準備や実施にかかる時間を考える必要があります。

例えば、鍼通電刺激には機器の設定や接続が必要です。特殊な手技も、内容によっては時間を要します。患者さんにとって必要な施術であれば時間を確保しますが、期待する効果と、必要な時間・手間を合わせて検討することも、実際の臨床では大切です。


記録や会計についても同様です。電子カルテやキャッシュレス決済は便利ですが、自院に必要かどうかは別に考えたいところです。紙のカルテや現金会計で支障なく運営できているなら、その方法を続ける選択もあります。

便利そうだからと導入を重ねると、月額利用料や決済手数料などの負担も増えます。どの業務が、どれだけ楽になるのか。そのためにいくらかかるのか。小規模な鍼灸院では、こうした費用の積み重ねが、手元に残るお金に影響します。


施術も設備も、できることをすべて取り入れる必要はありません。自分の施術方針と外来の流れに照らして、必要なものを選んでいくことが大切だと思います。


さいごに

鍼灸院の施術タイムスケジュールに、どの施設でも使える正解があるわけではありません。患者層や設備、スタッフの人数によって、無理なく対応できる人数や予約間隔は変わります。当院の表も、一つの例として参考にしていただければと思います。

また私自身も、東京と群馬で施術をするなかで、同じ方法ではうまくいかない場面を経験してきました。施術の技術を磨くとともに、患者さんをお待たせせず、自分も慌てずに対応できる流れをこれからも考えていきたいと思っています。

コメント


bottom of page