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デジタル大臣に就任した古川俊治議員と鍼灸―制度・研究・医療政策との関わり

執筆者の写真: 大慈松浦鍼灸院
大慈松浦鍼灸院
1 日前
読了時間: 6分

2026年9月17日、医師であり、博士(医学)の学位と弁護士資格を持つ古川俊治参議院議員が、デジタル大臣に就任し、初入閣しました。AI・デジタル改革推進やサイバー安全保障なども担当します。SNSでは、その多彩な経歴を紹介した投稿が注目を集め、古川先生への関心が高まっています。TMI総合法律事務所「大臣就任のお知らせ」


一方、古川先生はデジタル政策だけでなく、長年にわたり鍼灸の制度・医療政策などにも関わってきました。「鍼灸マッサージを考える国会議員の会」の事務局長公益社団法人埼玉県鍼灸師会の顧問を務め、鍼灸関連学会でも繰り返し講演しています。

『医道の日本』2015年5月号に掲載された古川俊治氏の顔写真と略歴
『医道の日本』2015年5月号の座談会「新しい時代の医療として期待される鍼灸」に掲載された古川俊治氏の紹介(『医道の日本』74巻5号、2015年、12~23頁より引用)

鍼灸の制度を検討する議員連盟の事務局長

現在、古川先生は「鍼灸マッサージを考える国会議員の会」の事務局長を務めています。


この議員連盟は、鍼灸やあん摩マッサージ指圧に関する制度について、国会議員、厚生労働省、関係団体が話し合う場です。療養費制度をはじめ、資格制度や業界が抱える課題などが取り上げられてきました。


2025年6月の総会では、古川先生が司会・進行を担当しました。会議では、厚生労働省が療養費制度などを説明し、日本鍼灸師会を含む関係団体が現場の課題や要望を伝えています。

また、2017年の役員会では、患者が窓口で自己負担分を支払い、残りを施術者が保険者に請求する「受領委任制度」について協議されました。古川先生は当時、議員連盟の幹事として出席しています。


古川先生は、鍼灸業界と行政の間で制度上の課題を調整する立場にあるといえます。


鍼灸関連の学会でも講演

古川先生は、2009年の第58回全日本鍼灸学会学術大会で「鍼灸診療への期待」と題して講演しました。

その後も、2014年に「現代医療における鍼灸の現状と今後の展望」、2025年に「漢方と鍼灸が現代医療の中で発展するためには」をテーマに講演しています。

2015年には、『医道の日本』の座談会「新しい時代の医療として期待される鍼灸」にも参加しました。

『医道の日本』2015年5月号に掲載された鍼灸と医療連携に関する座談会の冒頭見開きページ
古川俊治氏ら5名が、現代医療と鍼灸の連携について意見を交わしています(『医道の日本』74巻5号、2015年、12~13頁より引用)。

埼玉県では鍼灸師会の顧問

古川先生は、公益社団法人埼玉県鍼灸師会の顧問も務めています。同会の顧問には、埼玉県医師会会長や埼玉医科大学理事長も名を連ねています。

埼玉県選出の国会議員として地域の鍼灸師会と関わるだけでなく、埼玉医科大学東洋医学科の山口智先生らとも学術的な交流を続けています。


古川先生らが示した鍼灸の課題と将来像

2025年の講演内容は、山口智先生との共著論文「今後の医療の行方と期待される鍼灸手技療法」として公表されています。


この論文では、人口減少と高齢化が進む日本で、鍼灸が今後どのような役割を担うのかについて、制度、臨床、研究の面から4つの課題が示されています。


1.施術技術を適切に評価する

鍼灸やあん摩マッサージ指圧の療養費には、施術そのものに対する「施術料」と、施術者が患者の自宅などを訪問した場合の「往療料」があります。

論文では、専門職としての価値を高めるためには、訪問したことへの評価だけでなく、専門的な施術技術そのものを適切に評価する必要があると述べています。


また、鍼灸は来院による施術が中心であるのに対し、あん摩マッサージ指圧では訪問施術の割合が大きいなど、事業の形が異なります。そのため、両者を同じ枠組みだけで扱わず、それぞれの実態に応じた制度を検討すべきとしています。

一方で、人口が減少するなかでも、はり師・きゅう師の人数は増加を続けています。将来的には、施術を受ける人の数とのバランスを踏まえ、従事者数の適正化についても検討が必要になると指摘しています。


2.あはき法を現在の社会に合わせて見直す

「あはき法」とは、正式には「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」といい、これらの国家資格や業務などを定めた法律です。

論文では、この法律はほかの医療職の法律と比べても古く、現在の社会に合わない部分が残っていると指摘しています。

具体的には、法律の目的として「国民の健康な生活を確保すること」を明確にすることや、医業類似行為について定めた第12条を、より簡潔で分かりやすい表現に改めることを提案しています。

単に法律の文章を新しくするだけでなく、鍼灸やあん摩マッサージ指圧が国民の健康にどのような役割を果たすのかを、法律上も明確にしようとする提言です。


3.高齢者や慢性的な不調を抱える人を支える

高齢化が進むと、一つの病名では説明しにくい不調や、検査では原因を捉えにくい症状、慢性的な痛みを抱える人が増えていきます。論文では、こうした領域に鍼灸が役立つ可能性があるとしています。


鍼灸に強力な効果だけを求めるのではなく、機能が低下した高齢者にとって「少し楽になる」ことや、わずかな痛みの軽減が長く続くことにも意味があるという考え方です。痛みを和らげ、歩く力や生活機能を保つことができれば、生活の質(QOL)の向上や介護予防にもつながる可能性があります。

さらに、健康保険の範囲だけに依存せず、自費で施術を受けたい人への対応や、海外から来日する人に日本の鍼灸を提供する医療インバウンドの可能性にも言及しています。


4.科学的根拠を積み重ねる

鍼灸が現代医療のなかで一定の役割を確立するためには、経験だけでなく、科学的な検証を重ねる必要があるとしています。具体的には、客観的な評価項目を用いた多施設共同の無作為化比較試験(RCT)、専門医と連携した研究、作用機序を細胞・分子レベルで解明する基礎研究などが求められています。また、単施設研究では治療効果が大きく示されやすく、選択バイアスや出版バイアスの影響を受ける可能性にも触れています。


制度面では、古川先生らは、現行の「あはき法」が時代遅れになっていると指摘し、法律の目的や医業類似行為に関する規定を、より明確にする必要があると述べています。また、専門的な施術技術に着目した料金評価、人口減少下におけるはり師・きゅう師数の適正化、自費施術の需要開拓、医療インバウンドへの活用にも言及しています。


これらには鍼灸界にとって期待できる内容だけでなく、はり師・きゅう師の従事者数の適正化など、業界内で慎重な議論が必要な提案も含まれています。なお、論文で示された内容は古川先生らによる提言であり、政府として決定された方針ではありません。


鍼灸の制度と政治について

鍼灸は治療技術としてだけでなく、法律や資格制度、医療保険、政治との関係のなかで現在の位置づけが形づくられてきました。当サイトでも、これまで次のテーマを取り上げています。

  1. あはき法と医業類似行為の法的整理

    国家資格者による施術と無資格施術の関係について、櫻井充参議院議員の質問主意書と政府答弁をもとに整理しています。

  2. 鍼灸マッサージ医療の制度問題

    療養費制度、医師の同意書、受領委任制度などについて、平野貞夫元参議院議員の質問主意書から解説しています。

  3. 鍼灸制度の歴史―あはき法・医業類似行為・療養費制度の政治史

    明治期から現在まで、鍼灸の資格制度や療養費制度がどのような政治的経緯を経て形成されてきたのかをまとめています。

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