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第3回HARI×MEDセミナーを終えて|消化器専門医に学ぶ鍼灸と医療連携

  • 執筆者の写真: 大慈松浦鍼灸院
    大慈松浦鍼灸院
  • 12 分前
  • 読了時間: 7分
第3回ハリメドセミナー

2026年8月14日、第3回HARI×MED(ハリメド)セミナーを無事に終えることができました。

ご参加いただいた先生方、本当にありがとうございました。


今回は「消化器科と連携する鍼灸院になる」をテーマに、消化器症状を訴える患者さんをどのようにみて、どのタイミングで医療機関へつなぐのか、そして医療と鍼灸がどのように役割を分担できるのかについて考える機会となりました。


ご登壇いただいた消化器専門医の先生からは、私たち鍼灸師が普段なかなか知ることのできない、消化器専門医が患者さんを前にしたとき、頭の中で何を考えているのかというところからお話しいただきました。


消化器専門医は、まず「見逃してはいけない病気」を考える

腹痛、下痢、便秘、胃もたれなどは、鍼灸院でも比較的よく相談を受ける症状です。

私たち鍼灸師は、患者さんが目の前で困っている症状に対して、「どうすれば少しでも楽になってもらえるか」と考えることが多いと思います。

一方、消化器専門医が最初に考えているのは、その症状の背景に見逃してはいけない病気が隠れていないかということでした。

消化器領域には、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、胆膵疾患、感染症、悪性腫瘍など、早期に見つけて医学的な治療につなげる必要のある疾患があります。

まずは必要な検査を行い、治療すべき疾患がないかを確認する。そのうえで、器質的な異常だけでは説明できない症状について考えていきます。

講演の中では、この考え方が「Cureを優先し、そのうえにCareを積み重ねる」という言葉で整理されていました。

これは、医療機関と連携する鍼灸師にとっても、とても重要な考え方だと思います。

鍼灸で何ができるかを考える前に、「この患者さんは、先に医学的な評価を受けた方がよいのではないか」と考える。こうした判断が、安全な鍼灸臨床には欠かせません。


「検査で異常がない」ところから始まる困りごともある

今回のお話で特に印象に残ったのが、検査で重大な疾患が見つからなかったとしても、そこで患者さんの困りごとまで終わるわけではない、というお話でした。

過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)などでは、一般的な検査を行っても、症状を十分に説明できる明らかな器質的異常が見つからないことがあります。

しかし患者さんは、

「毎朝トイレが心配で通勤がつらい」

「会議中にお腹が痛くならないか不安になる」

「食事をすると胃が重くなるので外食を避けている」

といった、日常生活の中での困りごとを抱えていることがあります。


医学的には大きな病気が否定されて安心できる一方で、患者さんの生活の質まで元に戻るとは限りません。食事や睡眠、生活リズム、ストレス、不安、運動など、さまざまな要因が症状に関係していることもあります。重大な疾患を除外することと、その後も続く症状や生活上の困りごとに向き合うことは、別の話です。

消化器専門医が日々の診療で難しさを感じる場面の一つも、このあたりにあるのだと思いました。

そして、医学的な評価を受けた後も症状や生活上の困りごとが残っている患者さんに対しては、鍼灸が関われる場面もあるのではないかというお話がありました。


鍼灸師だから拾える患者さんの情報がある

今回の講演では、消化器専門医が鍼灸師に期待していることについても触れていただきました。

その中で印象に残ったのが、施術中の会話から得られる患者さんの「声」です。

鍼灸では、一人の患者さんと継続的に関わりながら、比較的ゆっくり話を聞く機会があります。

その中で、

「以前からお腹は弱かったけれど、ここ3か月ほどで急に悪化した。」

「朝食後と出勤前に症状が出やすい。」

「最近は夜中にも症状で目が覚める。」

「薬が変わってから便通も変わった。」

「最近、体重が減ってきた。」

こうした話が患者さんから自然に出てくることがあります。

鍼灸師にとっては日々の施術の中で交わされる何気ない会話かもしれませんが、医師にとっては、病気を考えたり、必要な検査を判断したりするための重要な情報になることがあります。


鍼灸師が病名を判断する必要はありません。ただ、患者さんと継続的に関わっているから気づける「いつもとの違い」や「症状の変化」があります。

それを適切なタイミングで医療機関へつなぎ、必要な情報を伝えることも、医療と鍼灸が連携していくうえでの鍼灸師の役割の一つだと思います。


どのようなときに医療機関へつなぐのか

もちろん、鍼灸院で消化器症状のある患者さんすべてを医療機関へ紹介するわけではありません。

一方で、①血便や②黒色便、③発熱、④強い腹痛、⑤嘔吐、⑥脱水、⑦意図しない体重減少などがみられる場合には、医学的な評価を優先する必要があります。

また、夜間や睡眠中にも症状が出るようになった、急に便通のパターンが変化した、中高年になってから新しい症状が出てきた、貧血を指摘されている、症状が長く続いている、あるいはこれまで一度も医療機関で評価されていないといった「経過」も重要です。


こうした情報から、鍼灸師が病名を推測することが目的ではありません。

大事なのは、「いつもの症状として、このまま鍼灸を続けていてよいのだろうか」と一度考えられることが重要なのではないか思いました。

その小さな引っかかりが、患者さんを適切な医療につなぐきっかけになることがあります。


消化器専門医へ紹介するとき、何を伝えるのか

さらに今回は、鍼灸師から消化器科へ患者さんを紹介する際の、紹介状・紹介メモの書き方についても具体的にお話しいただきました。

これは、翌日からでも実践できる非常に有用な内容でした。

紹介状で求められるのは、鍼灸師側で病名を推測して詳しく書くことではありません。

医師が患者さんの状態を判断するために必要な情報を、具体的に伝えることです。


講演では、主に次の4点が挙げられていました。

  1. いつから症状があるのか

「以前から胃腸が弱い」だけではなく、「3か月前から急に悪化した」など、症状が始まった時期や変化した時期を伝えます。発症時期や経過は、医師が患者さんの状態を考えるうえで重要な情報になります。


  1. どのくらいの頻度で、どのようなパターンで起こるのか

「下痢があります」だけではなく、「1日4〜5回の軟便があり、朝食後と出勤前に多く、休日は比較的軽減する」といった情報です。

症状の頻度や時間帯、食事や生活との関係まで分かると、患者さんの状態がより伝わりやすくなります。


  1. 気になる徴候の有無

血便、発熱、体重減少などについて、確認できている範囲を具体的に記載します。

「特に異常なし」とまとめるのではなく、「血便なし、発熱なし、体重減少なし」と書けば、鍼灸院で何を確認したのかも医師に伝わります。


  1. これまでの受診歴や検査歴

過去に胃内視鏡や大腸内視鏡を受けているのか、現在ほかの医療機関へ通っているのかなど、これまでどの程度医学的な評価が行われているのかも重要な情報です。


たとえば、

「IBSの可能性があると思いますので精査をお願いします」

と書くよりも、

「以前から腹部症状はありましたが、3か月前から下痢が急に悪化しています。1日4〜5回の軟便があり、朝食後と出勤前に多く、休日は比較的軽減します。血便、発熱、体重減少はありません。これまで大腸内視鏡検査を受けたことはありません」

と伝えた方が、医師にとっては患者さんを評価するための材料になります。


「連携する」ということ

今回のセミナーを通して、「医療と鍼灸が連携する」とは具体的にどういうことなのかも、整理されたように思います。

「病院と連携しています」と言うだけなら簡単です。

実際には、鍼灸師が患者さんの変化に気づき、必要だと思ったときには医療機関へつなぐ。

その際に、いつから、どのような症状があり、どのように変化してきたのかを整理して伝える。

そして、医療機関で重大な疾患が除外された後も、患者さんが症状や生活上の困りごとを抱えているのであれば、それぞれができることを考えていく。

消化器専門医と鍼灸師では、同じ患者さんと対峙していても、確認していることや、日々の関わりの中で得られる情報が異なります。その違いを理解して、必要な情報をお互いに渡していくことが、実際の連携なのだと思います。


今回の講演で示された、「Cureすべき病気を見逃さず、症状に困る患者さんを置き去りにしない」という考え方は、今回のセミナー全体をよく表している言葉でした。

消化器症状について知識を増やすだけではなく、専門医が患者さんを前に何を考えているのか、どこに難しさを感じているのか、そして鍼灸師からどのような情報を受け取りたいのか。

そこまで知ることができたことが、今回のHARI×MEDで得られた大きな学びだったと思います。

最後になりますが、ご参加いただいた先生方に、心より御礼申し上げます。

ありがとうございました。

 
 
 

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