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Speciality

専門外来(精神科・心療内科領域)

 この度、一定の基準が設けられたAPネットワーク(鍼灸師と精神科医の相互の連携システム)の「鍼灸院リスト」に“大慈松浦鍼灸院”と“神保町十河医院附属鍼灸院”が掲載されましたので、精神科領域に対する鍼灸でよくあるQ&Aをまとめました。

Q1. 鍼灸ってどんなことするの?

当院では、メンタルの不調に対する鍼灸治療にも力を入れています。

東洋医学には「心身一如」という考え方があります。これは、「心と体はつながっていて、どちらかが不調になると、もう一方にも影響が出る」という意味です。

実際に、ストレスが続くと胃が痛くなったり、寝つきが悪くなったりしますよね?
逆に、身体のコリや不調が取れてくると、心も少し楽になったという経験がある方も多いのではないでしょうか。

鍼灸では、

  • 自律神経のバランスを整えたり、

  • 呼吸を深くたり、

  • リラックスしやすくしたり、

  • 睡眠の質や食欲を改善したり、

といった形で、体から心へのアプローチを行っていきます。

不安や落ち込み、疲労感、イライラ、不眠など、心の不調が身体に現れているときにこそ、鍼灸は力を発揮する場面が多いのです。

鍼灸ってどんなことするの?

例えばこんな症状を診ています

寝つきが悪い女性
�気分の落ち込み
動機や息苦しさ
寝つきが悪い
気分の落ち込み、憂うつ
​動悸や息苦しさ
頭痛
頭痛
めまいやふらつき
不安になる 緊張する
めまいやふらつき
​不安・緊張する

​Q2. 鍼灸ってなんで効くの?

脳科学から見た鍼灸の効果

最近では、鍼灸の効果が「脳の働き」にどのように影響するかを科学的に調べる研究も進んでいます。

👉 要点をまとめると──

  1. 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)という脳の働きを可視化する方法を使って、
     

  2. 鍼灸治療がうつ病に関連する脳ネットワークの活動を調整していることを確認しました。

    特に、感情の調整やストレス反応に関わる脳の領域のバランスが整えられ、
    それがうつ症状の軽減につながったとされています。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Functional magnetic resonance imaging providing the brain effect mechanism of acupuncture and moxibustion treatment for depression"

🧠 この論文が示しているのは──
つまり、昔から「なんとなく効く」とされてきた鍼灸の効果は、今では脳科学の視点からも説明できるようになってきているというわけです。
心に効く」のは、脳と身体のつながりに働きかけているからなんですね。

fMRI 鍼灸
fMRI 条件 鍼灸

なんでうつに鍼治療が効くの?

2025年に発表された最新の研究では、うつ病に対する鍼治療の効果のひとつの機序に、「神経可塑性」が関係していることがわかりました。

🧠 神経可塑性ってなに?

神経可塑性とは、脳や神経系が刺激や経験に応じて柔軟に変化し、新しい機能を獲得する能力のことです。つまり、脳の神経細胞が新しくつながりをつくったり、再編成したりする力のこと。気分や感情のコントロール、記憶力にも深く関わっています。

🧩 うつ病の脳で起きていること

うつ病の方では、とくに「前頭前野」や「海馬」という部分で、

  • 脳のボリュームが萎縮したり、

  • 神経のつながり(シナプス)が減ったり
    することがわかっています。

神経可塑性と鍼灸

👉 要点をまとめると──

  1. 従来の鍼治療の研究では、鍼治療が気分や自律神経、炎症、神経伝達物質(例えば、セロトニンなど)に作用することが示唆されてきました。
     

  2. 鍼治療がなぜうつ病に効くのか?」という問いに対し、「神経回路のどこに、どのような形で、どの因子が関与し、どのタイミングで変化を起こすのか?」といったことが明らかとなりました。
     

  3. 鍼治療は、海馬や前頭前野などの脳領域での神経新生や神経可塑性を促進・調整し、うつ病の症状を軽減する可能性があります。

    また、この論文の著者は「鍼治療の効果を最大限に引き出すためには、個々の患者の状態に応じた適切な経穴の選択や刺激方法の調整が重要である」と述べています。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Possible antidepressant mechanism of acupuncture: targeting neuroplasticity"

🧠 この論文が示しているのは──
まり、新しい神経細胞が生まれる働きを促し、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質を増やし、脳の回復力を高め、神経のネットワークを調整し、脳の柔軟性(=神経可塑性)を回復させているのですね。

その結果として脳の働きが改善され、気分の安定不安の軽減などの効果が期待できます。

不眠 鍼灸 基礎研究

うつ症状のある方にとって、高頻度にみられる症状のひとつが「不眠」。

不眠はとてもつらい症状のひとつです。
「寝つけない」「眠りが浅い」「すぐ目が覚める」など、日常生活に大きく影響します。

鍼灸を受けたことがある方の中には、
「いつもよりぐっすり眠れた」「なんだか睡眠の質がよかった気がする」と
体感として睡眠の改善を感じる方が多くいらっしゃいます。

では、なぜそんなことが起きるのでしょうか?

​こんな論文があります。

睡眠と鍼灸の関連メカニズム

👉 要点をまとめると──

  1. 古くから不眠症に対して用いられてきた経穴は、
     

  2. 睡眠の質の改善(臨床効果)に結びつき、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)という客観的手法でも効果を示しました。

    このような脳のネットワークの調整効果が、
    ‣ストレスの軽減や、
    ‣自律神経の安定、
    ‣より深く質の高い睡眠
    に繋がっていると考えられています。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"The increased functional connectivity between the locus coeruleus and supramarginal gyrus in insomnia disorder with acupuncture modulation"

🧠 この論文が示しているのは──
まり、「鍼でよく眠れる」という感覚には、脳科学的な根拠があるということです。
伝統的な経穴の効果が、現代の最新技術(fMRI)によって客観的にも確認されているんですね。

不眠 ツボ
不眠 鍼灸 改善
不眠 鍼灸 改善
不眠 鍼灸 有効

鍼灸を受けた人が「ぐっすり眠れた」と感じることは、
単なる気のせいではありません。

人間の臨床研究だけでなく、動物実験によるエビデンスも出てきています。

👉 要点をまとめると──

  1. 鍼治療は睡眠障害に対して有効であり、
     

  2. その効果は、特定の脳領域を介し、複数の神経伝達物質や分子経路を調整することによって発揮さていました。
    メカニズムの要点は、①神経伝達物質の調整、②神経栄養因子と可塑性の促進、③ストレス、内分泌の調節、④シグナル伝達経路の活性化、⑤アポトーシスの制御 でした。そして、これ以外にも鍼治療は、特定の脳領域(視床下部、海馬、脳幹など)にも影響を及ぼし、これらの変化が睡眠の質や量の改善に寄与している可能性があります。


    複数の神経経路や化学物質の調整を通じて睡眠に影響を与えているんですね。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"The effects of acupuncture on sleep disorders and its underlying mechanism: a literature review of rodent studies"

🧠 この論文が示しているのは──
つまり、「眠れるようになる」という効果は、科学的に実証されつつあるということです。
伝統的な鍼灸の経験則が、現代の実験・科学によって客観的に裏付けられ始めているのです。

鍼灸 メカニズム
不眠 鍼灸 メカニズム

このような背景がある中、当院の松浦らは、うつ病患者さんに対して鍼の刺激を行い、脳血流の変化をArterial spine labeled MRIで前後の状態を測定しました。

実際の研究とエビデンス紹介

🧠 研究のポイント:

  1. うつ病患者では、前帯状皮質や左背外側前頭前野の血流が低下している傾向がありました。
    これらは「意欲・感情・思考」に深く関与する領域です。

  2. 刺激直後から増加(前頭前野、視床・視床下部など)し、その効果は、鍼刺激終了30分後にも脳血流増加が持続していることを明らかとなりました。

✅ つまり:

  • 鍼灸は脳の血流を調整し、

  • うつ病に関わる脳機能を改善する可能性がある、ということが客観的に示されました。

 

このように、「なんとなく気分が軽くなった」という体感には、実際に脳内の変化が伴っていることが明らかになりつつあります。うつ症状に対する鍼灸は、経験則だけでなく、科学的な根拠とメカニズムの理解が進んできているのです。

脳血流の変化
鍼刺激による脳血流の変化

さらに精神科医の協力の下、うつ病や双極性障害うつ状態における鍼治療の効果を、鍼治療を行った期間と行っていない期間を比較し検証しました(松浦ら, 全日本鍼灸学会. 2019)。

🔍 研究の方法:

  • 同一患者において
     「標準治療のみの期間」と「標準治療+鍼治療の期間」を比較しました。
     (標準治療=薬物療法・カウンセリングなど)

✅ 結果:

  • 鍼治療を併用した期間の方が、
    うつ症状・不安症状ともに有意に軽減していました。

📌 結論:

  • 標準治療に鍼治療を併用する方がうつ病と双極性障害うつ状態の患者さんの症状軽減に効果的であることを明らかにしました。

HDSDの変化
HSDSの変化

 なお、この研究内容は今後の鍼灸医学の発展に寄与するものとして高く評価され、代田賞奨励賞を受賞することができました。

Q3. 鍼灸の効果っていつから出るの?

🕊️ うつ病や双極性障害うつ状態など精神科領域の症状に対して、
鍼灸は “じわじわと効いてくる” のが特徴です。

📈 治療効果の目安:

  • 週1回の頻度で継続した場合、治療開始から約3ヶ月後には、多くの方が「少し楽になった」と体感されます。

  • その後も継続することで、6ヶ月〜数年をかけて、症状のさらなる改善・服薬量の減量・再発予防、そして寛解(完治)を目指します。

🧭 治療効果を左右するポイント:

  1. 病状の重さや罹病期間の長さ

  2. 患者さんご自身の「治療への参加姿勢(アドヒアランス)」

  3. 治療者からの治療提案(頻度・期間)を守ること

📝 大切なこと:

  • 数回で治す」というよりも、じっくり身体を整えていくアプローチです。

  • 鍼灸は、「心身を土台から整える力」を発揮します。

  • 精神症状に対しては、薬物療法と並行することで、より安定した改善が見込まれるのが特徴です。

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Q4. 予約はどうすればいいの?

 当院は予約制のため受診を希望される場合には、お電話にてご予約をお願いしております。初診には約1時間ほどかかりますので、時間に余裕を持ってご予約をお取りください。

◎ 精神科・心療内科などに通院している患者さんにお願い

  • 鍼灸院を受診する場合には、鍼灸治療を受療する旨を医師に伝えていただきたいです。また可能であれば、診療情報提供書を作成していただければスムーズに、そしてより安全に鍼灸治療を実施することができますが、必ずしも必要なわけではありませんので、一度医師に相談するとよいでしょう。

  • 鍼灸師は医療法上、診断権はなく薬剤に関する説明は行うことはできませんので、仮に鍼灸治療を受けて症状が軽減あるいは改善したとしても、自己判断で精神科・心療内科などの通院を中断したり、決められた服薬量を減量するようなことは必ず避けてください。

予約はどうすればいいの?
鍼灸の効果っていつから出るの?

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