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PMPS

乳房切除後疼痛症候群

乳房切除後疼痛症候群 PMPS

​​​ Changらは「術後持続痛(PMPS 相当)は単一の病態ではなく、主に①神経性起因、②筋骨格性/体性起因、さらに③中枢性・感作性が重なることが多い」と整理しています。

● 鍼治療の有効性について
 PMPS患者に対する鍼治療の最初の症例報告は、2014年に発表されたJoshua Baumlらの研究です。

​👉 Treatment of post-mastectomy pain syndrome with acupuncture: a case report
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研究の概要
 手術直後から胸部全体に帯状の激烈な痛みを訴えていた症例に対して、鍼治療が症状の改善に寄与したと報告されています。薬物療法や理学療法で十分な効果が得られなかった難治例に対し、鍼治療を行うことでQOLの向上、薬物中止、さらにはホルモン療法の再開に至った点は、臨床的に非常に注目すべき点だと感じました。

 また、本症例の鍼治療は、緩和ケアに精通した医師が実施しており、鍼灸の臨床経験は10年以上あると記載されています。そして、特に私が注目したのは“選穴”です。局所(痛む部位)と遠隔部の経穴を組み合わせた施術が行われていました。胸部は疼痛や感受性が高いため、斜刺によるごく浅い刺入で刺激はほとんど与えていませんでした。この点は、SDM(Shared Decision Making)に基づき、個別化された鍼治療が実践されていたことを示していると思います。

 私も埼玉医科大学在籍時にPMPSのケースレポートを報告しています。この症例報告の新規性や独自性は以下の点にあります。

  1. 術後10年以上経過したPMPS患者への鍼治療の適用
    長期経過後の症例に対する鍼治療の有効性は明確ではありませんでした。長期間経過したPMPS患者に対しても鍼治療が有効である可能性を示唆しています。

  2. 肩関節可動域制限を伴うPMPS患者への鍼治療の適用
    PMPS患者において肩関節可動域の制限を併発することは一般的であり、これに対する鍼治療の有効性を示す症例報告は限られていましたが、PMPSと可動域制限の両方に対して鍼治療が有効である可能性を示すことができました。

  3. 多面的な評価指標の使用
    本研究では、痛みの程度(NRS)以外に、肩関節可動域、心理的側面、そして生活の質(SF-36)など、複数の評価指標を用いて治療効果を検討しました。鍼治療は、痛みの軽減だけではなく、心理的側面や生活の質向上にも寄与する可能性を示すことができました。


​ そして、2026年に岡山県で開催予定の全日本鍼灸学会学術大会でもPMPSの症例を報告する予定です(現在、投稿準備中)。

 PMPSに対する鍼治療の有効性を検討した研究は、現時点ではごく限られています。BaumlらはPMPSを神経障害性疼痛の一種と捉え、鍼刺激が末梢・脊髄・中枢における鎮痛機序を介して効果を発揮する可能性を示しました。さらに、がん治療に伴う化学療法誘発末梢神経障害(CIPN)に対しては、無作為化比較試験で鍼の有効性が報告されています。これらの知見は、神経障害性疼痛における鍼の生物学的・臨床的有効性を支持する間接的な根拠となり得ると考えられます。

● 乳がん治療後の後遺症について

 乳がん治療後の後遺症(痛み、しびれ、倦怠感、ホットフラッシュ、神経障害など)は生存者の日常生活やQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。標準治療だけでは対処できない症状も中にはあるため、鍼灸治療が注目され、その一つの手段として検討されています。

 アメリカの有名ながんセンター「Mayo Clinic」で行われた調査(2020年)によると、乳がんを経験した415人のうち、鍼灸を受けた人の多くが症状の改善を感じていました。

 

研究の概要

 本研究は、米国Mayo Clinicに登録された乳がん生存者を対象に、鍼灸治療の利用実態を横断調査したものです。

  • 対象:乳がん治療関連症状に対して鍼灸を経験した415名

  • 有効回答者:241名

 この241人中、193 人(82.1 %)が何らかの改善を感じたと報告しています。また、4人に1人(24.1%)は「大きく改善した」または「症状がほぼなくなった」と回答していました。

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症状別改善率

  • 改善を感じやすかった症状は「頭痛(79%)」、改善率が低かったのは「リンパ浮腫(56%)」

  • 効果が「すぐに感じられた(34%)」「数回で感じられた(40.4%)」と報告する者が多かった点も、比較的早期に効果を実感できたケースがあることを示唆しています。

米国における鍼灸院の受診形態

 鍼灸治療を提供する場としては、「Private offices」がもっとも多く(61.0%)、医療機関で行われる鍼灸は42.3%でした。また、患者は自ら探して受診したケースが過半数を占め、腫瘍内科医からの紹介は24.1%ほどでした。鍼灸を医療機関(がんセンター、病院等)の中に組み込む例は限られていることがわかりました。

​​👉 Real-world experiences with acupuncture among breast cancer survivors: a cross-sectional survey study

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さいごに

 PMPS以外にも乳がん治療に伴って出現してしまった症状に対して鍼灸は有効的な場合が多いです。お困りの際にはぜひご相談ください。​​​​​

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