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​東洋医学ってなに?

 『東洋医学』という言葉はよく耳にするものの、実際にはどのようなことが行われているのかをよく知らないといった方が多いと思います。ここでは東洋医学がどういうものなのか解説していきます。

東洋医学とは

 東洋医学は、中国起源の伝統医学(中医学)で、中国から直接あるいは朝鮮半島経由で伝来し、鎖国下の日本で独自の発展を遂げたものです。漢方医学という言葉も聞いたことがあると思いますが、これは江戸時代中頃に広まった蘭方医学と区別するために生まれた名称です。

東洋医学の起源

東洋医学の伝来

 東洋医学は漢方薬と鍼灸、按摩で構築されている医学体系です。日本に現存する最古の医学書『医心方』には鍼灸が記載されており、江戸時代までは漢方とともに医科本道として日本の医療を担ってきました。

医心方

丹波康頼と医心方

丹波康頼(912~995)は、平安時代中期の貴族・医者・鍼博士(当時の医療を司る役職のひとつ)で、随や唐から伝わった多くの医学書を元に『医心方』を編纂し、984年に完成、翌年朝廷に献上しました。医心方は全30巻で構成されており、第2巻に鍼灸のことが記載されています。丹波康頼は鍼博士、つまり一流の鍼灸師だったので、『巻第二 忌鍼灸部』は気合を入れて書いたのではないでしょうか?

丹波康頼

 一方、蘭方医学は江戸時代に伝来し、その後、少しずつ国民に普及していきました。そして1874年(明治7年)、時の明治政府は西洋諸国の医事制度を模範とした医制を制定しました。それによって医学の主流は西洋医学となり、東洋医学は禁じられることはないものの、こうした背景のもと衰退の一途をたどります。しかし、一度は衰退した東洋医学でしたが、明治末には西洋医学にはない独自性と有用性が見直され、再評価されるようになりました。

華岡青洲(1760~1835)は漢方医学と蘭方医学を学び、1804年に世界初の全身麻酔による乳癌摘出術を成功させた人物です。華岡先生は通仙散と呼ばれる6種類の生薬からなる独自の経口麻酔薬を開発し、これを使用したと言われています。東洋医学と西洋医学を融合させ、独創的な業績を残しました。また、1823年に医師シーボルトが来日し、新しい西洋医学が伝えられると、医学はさらに発展しました。

華岡青洲

華岡青洲

​東洋医学の特徴

 西洋医学も東洋医学も患者を治すという根本は同じですが、アプローチの方法が異なります。西洋医学では、患者の訴えのほかに検査も重視していて、その検査結果から病気の可能性を探ったり、治療法を考えたりします。検査結果や数値などにしっかり表れる病気を得意としていると言えます。

現代医学的な検査

 一方、東洋医学は患者の訴えや体質を重視しています。東洋医学の診察では『四診』という「望診」、「聞診」、「問診」、「切診」の4つを用いた特有の方法を用いて診察します。検査データなどをもとに病名を診断する西洋医学と違って、東洋医学では四診によって得られた情報をもとに身体の状態を『証(しょう)』という形で診断します。四診によって陰陽のバランスの乱れや気・血・津液の不足や滞り、五臓の不調などを見極めます。例えば、血の巡りが悪ければ「お血証」、肝の機能が低下していれば「肝虚証」が証になります。鍼灸では一般的に証と処方(選穴)を対応させる方法が用いられます。

​問診

症状のある部分だけではなく、

心身全体についてお聞きします。

​脈診

脈の深さ、速さ、緊張状態などを診ます。

​舌診

舌の形や色、苔の状態などを診ます。

​腹診

腹壁の緊張状態、抵抗、圧痛などを診ます。

東洋医学の診察方法

東洋医学における問診では症状のある部分だけではなく、心身全体についてお聞きします。
東洋医学における舌診では舌の形や色、苔の状態などを診ます。
東洋医学における腹診では腹壁の緊張状態、抵抗、圧痛などを診ます。
東洋医学における脈診では脈の深さ、速さ、緊張状態などを診ます。

鍼灸とは

 経穴(いわゆるツボ)は全身に361箇所あります。経穴はランダムに散在しているのではなく、陰陽で分類された12本からなる経絡という気血の流れるルート上に存在しています。この経絡経穴に対して、鍼や灸によって刺激を与え、身体のバランスを整えるのが鍼灸治療です。治療法は鍼灸院によって様々ですが、使用するのは鍼と灸ということは共通しています。

直接灸と間接灸
当院で採用している鍼
経穴の説明

経穴

鍼​について

一般的に治療で用いられる鍼は、直径0.16~0.30mmのディスポーザブル鍼(使い捨て鍼)です。日本鍼灸の特徴のひとつとして、江戸時代に杉山和一によって考案された管鍼法(鍼管というガイドチューブを用いて鍼を刺入すること)が主流な技法となります。

​鍼は細いほど刺激が繊細となり、痛みを感じることが少なくなります。当院では、一般的に用いられている鍼よりもさらに細く直径0.14mmの鍼を使用しています。

かつては直接灸(艾をひねり皮膚上に直に据える)が主流でしたが、現在は既に成形されたお灸(せんねん灸)を用いることが多くなりました。このタイプのお灸は間接灸とも呼ばれ、艾と皮膚との間に間隙をつくり、輻射熱による刺激を行うため、火傷の痕がつきにくいといったメリットがあります。しかし、効力としては、古来の直接灸には及ばないとされています。

​お灸について

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