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Research

現代科学が解き明かす「鍼灸」とは?

鍼灸治療を受けたことがある人の多くが、「なんだか調子がいい」「気持ちが落ち着く」「眠りが深くなる」など、言葉にしづらい“いい感じ”を実感していますよね――

「鍼灸って、なんかいいよね。」という“体感”には、実は現代科学でも少しずつ解明されつつある根拠があります。

鍼治療
合谷 お灸

我々、鍼灸師が用いるのは、

鍼(はり)」と「お灸(お灸)」。

どちらも経穴(ツボ)に刺激を与えることで、からだ本来の力(自然治癒力を引き出します。

「ツボってなんだろう?」「なんで効くんだろう?」と興味があるので調べてみました

Q. ツボってなんだろう?

実は、ツボ(経穴)は、単なる「昔からある不思議なポイント」ではありません。

👉 要点をまとめると──

  1. 内臓にトラブルがあると、特定の皮膚に“神経原性炎症スポット”が現れます。
     

  2. その炎症スポットの約70%が、伝統的に言われてきた「ツボ」の位置と一致していました。
     

  3. そして、実際にそのツボを刺激すると、内臓の不調が改善する。

    つまり、ツボとは経験則だけでなく、身体の変化が現れやすい場所だったということです。しかも、少しずれた場所を刺激しても効果はなかったという研究結果があります。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Acupuncture points can be identified as cutaneous neurogenic inflammatory spots"
 

🧠 この論文が示しているのは──
体の不調 → 特定の皮膚にサインが現れる → そこがツボとなり、治療点にもなるということ。

神経原性炎症スポット

Q. ツボって、なんで効くの?

ツボを刺激すると、身体が自ら治ろうとする反応が起きます。
最近の研究では、こんなメカニズムがわかってきました。

👉 要点をまとめると──

1.特定のツボを刺激すると、「迷走神経−副腎軸」が活性化されます。

2.その結果、体全体に広がっている炎症が鎮まりやすくなることが確認されました。

3.この反応において、足の「足三里」というツボがとくに注目されました。
 
 ​つまり、局所の刺激が全身に良い影響を与えるのです。
​ ここには「PROKR2」という分子マーカーを持った特殊な神経センサーが存在しており、
 ツボ刺激→自律神経→副腎→抗炎症という流れのカギを握っていたのです。

このメカニズムは、Natureに掲載されるなど、世界的にも注目されている内容です。

 

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal-adrenal axis"

 

🧠 この論文が示しているのは──

「ツボが効く」のは気のせいじゃない。
ツボには、身体のセンサーが密集していて、正しく刺激すれば本当に身体が反応する。
そんな仕組みが、今まさに科学の力で解明されつつあるのです。

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鍼治療は、免疫にも働きかける。

私たちが普段おこなっている鍼治療──
その局所的な刺激が、実は全身の免疫バランスに影響を与えているかもしれない。
そんな可能性を示す、大規模な文献レビューがあります。

👉 要点をまとめると──

1.鍼刺激が局所の免疫細胞を動かし、

2.その反応が迷走神経や交感神経を介し、

3.全身の免疫系に影響を与えることが分かりました。

 
 ​鍼治療が、全身の免疫システムを整える可能性があるということ。
 これは、アトピー、喘息、自己免疫疾患、慢性炎症など、
 「免疫の乱れ」が関わる疾患への応用にもつながる、非常に示唆的な内容です。

この結果は、多数の動物実験の全体像を俯瞰したものです。鍼刺激が「どのように局所・中枢・全身免疫に影響するのか」を捉えています。

 

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Changes of local microenvironment and systemic immunity after acupuncture stimulation during inflammation: A literature review of animal studies"

 

🧠 この論文が示しているのは──

鍼刺激によって起こる身体の変化は、単なる「局所の血流改善」ではない。
神経・免疫・内分泌のネットワークを介して、全身性の抗炎症作用を引き出すメカニズムが動物実験レベルで支持されているということ。

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Q. 結局、ツボってなんなの?

昔の鍼灸師は、ツボを「身体が教えてくれる反応点」として捉えていました。
そして今、現代科学はこうした直感的・経験的な知をさまざまな視点で再構築しようとしているのです。

👉 要点をまとめると──

1.ツボは「常に固定された場所」ではない

2.ツボの出現には「Cutaneous C-Nociceptors」が深く関与し、

3.感作されたツボは、「治療点」として特に反応性が高くなる。

 
 ​つまり、体の異常が“ツボ”を生み、そのツボを刺激することで異常を整えるという双方向の働きがあります。

この結果は、東洋医学の核心を現代科学で説明していると思います。

 

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Advancing the Understanding of Acupoint Sensitization and Plasticity Through Cutaneous C-Nociceptors"

 

🧠 この論文が示しているのは──

ツボとは──

身体の状態や病態に応じて皮膚に“出現する反応点”であり、治療効果を引き出す神経・免疫・内分泌のネットワークの入口で、その状態を鍼灸師が見極めることで回復を促すことができます。

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Q. なんでツボに鍼を刺すと効くの?

その答えは、体の状態や病気の状態によって身体にでてくる「反応点」だからです。

例えば、過敏性腸症候群(IBS)という検査では異常が見つからないのに、お腹の調子が悪くなってしまう慢性的な腸の機能障害に対する基礎研究があります。

👉 要点をまとめると──

1.ST25(天枢)への鍼刺激で、IBSモデルラットの腸の症状が軽くなった

2.ST25からの刺激が、結腸(大腸の一部)の機能に影響していた

3.ST25と結腸が同じ脊髄のレベル(胸腰髄)を通してリンクしていることが分かった。

鍼で刺激するツボ(ST25)は、ただの点ではなく、内臓とつながる神経の「入り口」のような場所。

そのツボを刺激すると、
✅ 脊髄を通して、内臓に信号が届き、
✅ その内臓の働きが調整される
という 「神経的な反射」が起きているということ。

このことを専門的には「体性-内臓反射」と言います。

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"Modulation of colonic function in irritable bowel syndrome rats by electroacupuncture at ST25 and the neurobiological links between ST25 and the colon"

 

🧠 この論文が示しているのは──

ST25(天枢)は、IBSや便秘・下痢の鍼治療で頻用されてきましたが、今回の研究はその伝統的知見がIBSの症状を軽減させ、さらに神経科学的な根拠を与えました。

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そして、伝統と現代科学の融合。

「鍼ってなんかいいよね」という、言葉にはならないけど確かに感じる“からだの実感”。

 

昔の鍼灸師たちは、それをとても大切にしていました。

たとえば、不眠に悩む人を前にしたとき──
「なんだかこのツボ(百会や神門や三陰交)に反応が出ることが多いな」
「ここを触ると、他より硬い・冷たい・痛がるな」といった身体のサインを感じ取りながらツボを選んでいました。

こうした経験が積み重なって、「不眠のときには〇〇というツボがよく使われる」といった伝統的な経穴の選定が築かれてきたのです。

そして、今。
fMRIや神経科学の研究が進むことで、その経験知が科学的にも意味のある選択だったことが、少しずつ証明されはじめています。

👉 要点をまとめると──

1.鍼灸は「主観的な効果」だけでなく、「客観的な手法」でも確認された

2.脳の特定領域に「機能的結合性(functional connectivity)」の変化が出現し、

3.この意義は「伝統的配穴の臨床効果を、脳機能レベルで裏付けた」点にあります。

 
 ​つまり、古くから“不眠に効く”とされてきた経穴の効果が、主観的評価だけでなく脳の機能的な変化としてfMRIという現代の最新技術を用いて実証されました。

この結果は、鍼灸は「現代科学の視点からでも意義のある治療法である」ということを説明していると思います。

 

このことを裏づけるのが、以下の論文です:

"The increased functional connectivity between the locus coeruleus and supramarginal gyrus in insomnia disorder with acupuncture modulation"

 

🧠 この論文が示しているのは──

鍼灸はなんとなく効く」ではなく、

脳内の神経ネットワーク(青斑核と縁上回)を再構築することが、fMRI(機能的MRI)を使った客観的な方法で確認され、伝統的なツボの選定(経験則)が、現代神経科学でも正当化されつつあります。

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(まとめ)

鍼灸って、いいよね。

✅ 1. ツボは身体の状態を反映する

 かつては経験的に「なんとなくここが効く」とされてきたツボの場所。しかし最新の研究では、身体に不調があると皮膚に「神経原性炎症スポット」が現れやすいことが示されました。その場所は、古くから伝えられてきた経穴と約70%が一致しています。

 つまりツボとは、からだの異常を反映して“現れる”機能的な点であることがわかってきたのです。

✅ 2. ツボの刺激は、全身に作用する

 ツボを刺激すると、末梢神経→脊髄→内臓や中枢神経に情報が伝わり、身体機能に影響を及ぼします。

これは「体性-内臓反射」と呼ばれる生理学的反応で、

例えば:

  • ST25(天枢)への刺激が結腸の運動機能を改善した(IBSモデル)

  • 足三里刺激が迷走神経―副腎軸を介して抗炎症効果を引き出した

  • また、鍼刺激により脳の機能的な異常(fMRIで測定可能)が変化し、不眠などの症状改善にもつながっています。

✅ 3. 感覚神経(C線維)の可塑性が、ツボの“効く”メカニズムに関係

「ツボが出現する」とは、感覚神経が感作(過敏化)されること。病態により、ある皮膚領域の感覚神経が活性化し、そこに鍼刺激を加えると、通常よりも大きな神経反応が起こるようになります。

これが、「病気のときには〇〇のツボが効く」とされてきた経験知の科学的裏付けです。

✅ 4. 鍼灸は、「なんとなく効く」から「こういう仕組みで効く」へ

昔の鍼灸師たちが感覚的に使ってきた「ここに鍼を刺すとよくなる」という知恵は、現代科学により神経、免疫、中枢系レベルでの効果機序が明らかになりつつあります。これからの研究に期待したいですね。

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