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鍼治療で炎症が軽減するのはなぜ?エビデンスからみる抗炎症作用の仕組み

鍼治療の作用については、鎮痛や血流、自律神経など、さまざまな方向から研究が行われています。そのなかで近年、研究が進んでいる分野の一つが「炎症と免疫」です。

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鍼刺激によってTNF-αやIL-6などの炎症に関係する物質が変化することは、これまで多くの動物研究で報告されてきました。しかし、現在の研究は「炎症性サイトカインが下がった」という段階からさらに進んでいます。

身体に加えられた鍼刺激をどの感覚神経が受け取り、その情報がどのように脊髄や脳へ伝わり、さらに自律神経や内分泌系を介して免疫反応に影響するのか。こうした神経と免疫のつながりが、少しずつ明らかになってきました。[1-8]

 

この記事では、鍼治療による抗炎症作用について、代表的な研究を紹介しながら、現在どこまで分かっているのかを整理します。

そもそも「炎症」とは何か

炎症というと、身体にとって悪いものという印象を持つかもしれません。しかし炎症は本来、感染や組織損傷から身体を守るために必要な生体反応です。

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細菌やウイルスが侵入したり、組織が傷ついたりすると、免疫細胞がその変化を感知します。するとTNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインをはじめ、さまざまな物質が放出され、血管や周囲の免疫細胞に働きかけます。その結果、血流が増加し、血管透過性が高まり、好中球やマクロファージなどの免疫細胞が傷害部位へ集まります。

つまり炎症は、異物を排除し、傷ついた組織を守り、修復するための一連の反応です。一方、この反応が必要以上に強くなったり、長く続いたりすると、正常な組織にも障害を及ぼすことがあります。

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そのため、ここでいう「抗炎症作用」は、炎症そのものをなくすというより、過剰になった炎症反応がどのように調節されるのか、という意味で考える必要があります。

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神経系も炎症を調節している

炎症は免疫細胞だけで完結する反応ではありません。現在では、神経系も免疫反応の調節に関わっていることが分かっています。

この分野の重要な研究の一つが、2000年にBorovikovaらが『Nature』に報告した研究です。[1]

​この研究では、ラットにエンドトキシンを投与して全身性の炎症を起こし、迷走神経を直接電気刺激しました。その結果、血中TNFの産生が低下し、全身性の炎症反応が抑えられました。[1]

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この論文が示した大きな意味は、神経への刺激によって免疫反応が変化し得ることです。その後、こうした神経系による炎症調節は「inflammatory reflex(炎症反射)」として整理され、神経と免疫の相互作用を扱う研究が発展していきました。[2]

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鍼刺激による抗炎症作用の研究も、この神経―免疫連関の研究と深く関係しています。

1.鍼刺激を感覚神経が受け取る

鍼を皮膚や筋肉へ刺入すると、まず刺激を受けるのはその部位にある組織です。皮膚、筋肉、筋膜、血管、骨膜などにはさまざまな感覚神経が分布しており、鍼刺激や鍼通電刺激によってこれらの感覚神経が活動すると、その情報は脊髄や脳へ伝えられます。

この「刺激の入口」となる神経を具体的に調べたのが、2021年にLiuらが『Nature』に発表した研究です。[5]

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2021年|どの感覚神経が鍼刺激を伝えるのか

研究グループは、マウスの足三里(ST36)付近へ低強度の鍼通電刺激を行い、全身性炎症に対する反応を調べました。そのうえで、「この刺激をどの感覚神経が受け取っているのか」を遺伝学的な手法を用いて詳しく検討しました。

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そこで注目されたのがPROKR2陽性感覚ニューロンです。この感覚神経は、四肢の筋膜や骨膜などの深部組織に多く分布しています。

PROKR2陽性感覚ニューロンは、後肢では筋肉や骨膜などの深部まで分布する一方、腹部では深部への分布が少ないことが示されています。Liu et al., Nature, 2021.

PROKR2陽性感覚ニューロンを選択的に除去すると、足三里付近への低強度鍼通電刺激によって通常みられる自律神経反応や抗炎症反応が大きく低下しました。一方、腹部ではこの感覚神経の分布が異なり、同じ低強度刺激を行っても同様の反応は生じませんでした。[5]

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この研究が伝えたのは、刺激する場所の深部にどのような感覚神経が分布しているかという解剖学的な違いが、その後の生体反応に関係する可能性を示した点が重要です。

経穴を皮膚表面の一点として考えるだけではなく、その下に存在する筋、筋膜、骨膜、神経などの構造を含めて考える必要性を示した研究ともいえます。

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2.感覚神経から自律神経・免疫系へ

鍼刺激によって活動した感覚神経の情報は、脊髄や脳幹などの中枢神経へ伝わります。そして、中枢で処理された情報が自律神経や内分泌系を介して、離れた臓器や免疫系へ影響すると考えられています。

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この仕組みを考えるうえで重要なのが、2014年にTorres-Rosasらが『Nature Medicine』に発表した研究です。[3]

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2014年|鍼刺激と全身の炎症を神経でつないだ研究

この研究では、マウスに全身性炎症や敗血症を起こし、後肢へ鍼通電刺激を行いました。その結果、TNF、IL-6、MCP-1などの炎症関連物質が低下し、敗血症モデルでは生存率も改善しました。[3]

鍼通電刺激群では、TNFやMCP-1など複数の炎症関連物質が対照群より低く推移しました。Torres-Rosas et al., Nature Medicine, 2014.

研究者らはさらに、この反応がどのような経路で起こるのかを検討しました。坐骨神経を切断すると鍼通電刺激による抗炎症作用が失われ、副腎を摘出したマウスでも同様に効果がみられなくなりました。また、副腎ではドーパミン産生が増加し、ドーパミンD1受容体を介した作用がサイトカイン産生の抑制に関係していることが示されました。[3]

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この研究については、「鍼刺激による抗炎症作用とは? Nature Medicine 2014年の研究」で詳しく紹介しています。

3.刺激する場所と刺激量によって反応は変わる

「鍼刺激が自律神経に作用する」と聞くと、どこへ鍼をしても同じような反応が起こるように感じるかもしれません。しかし、その後の研究では、刺激する場所や刺激強度によって動員される神経回路が異なることが示されています。

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2020年|刺激部位と刺激強度によって異なる神経回路が働く

2020年にLiuらが『Neuron』に報告した研究では、マウスの後肢や腹部に異なる強さの鍼通電刺激を行い、全身性炎症に対する反応を調べました。[4]

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後肢への低強度刺激では、迷走神経や副腎が関係する経路を介して抗炎症反応が生じました。一方、腹部への高強度刺激では、脊髄から交感神経を介して脾臓へ向かう別の経路が活動しました。[4]

刺激する場所と刺激量によって反応は変わる

刺激部位と刺激強度によって異なる神経回路が働く

さらに興味深いのは、この交感神経経路が常に抗炎症的に働くわけではなかったことです。炎症を起こす前に刺激した場合と、すでに強い炎症が生じたあとに刺激した場合では反応が異なり、病態によっては炎症を促進する方向に働く可能性も示されました。[4]

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「迷走神経―副腎系」はどう考えればよいのか

2014年、2020年、2021年の研究では、「vagal-adrenal axis(迷走神経―副腎系)」という表現が用いられてきました。[3-5]

ただし、ここを「迷走神経が副腎を直接支配している」と理解するのは注意が必要です。

2024年、Trevizan-BaúとMcAllenは『Journal of Comparative Neurology』に、vagal-adrenal axisについて解剖学的・生理学的な知見を整理した論文を発表しました。[6]

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副腎髄質は主として交感神経系によって支配されています。迷走神経の遠心性線維が副腎を直接支配しているという解剖学的証拠は十分ではなく、「迷走神経―副腎系」という名称をそのまま直接的な神経接続として理解することには慎重であるべきだと指摘されています。[6]

そのため現在は、鍼刺激による感覚入力がまず中枢神経へ伝わり、その情報処理を介して複数の自律神経・内分泌経路が活動し、結果として副腎や免疫系の働きが変化すると考える方が、より適切です。

つまり、鍼刺激から免疫反応までを大きくみれば、「鍼刺激 → 感覚神経 → 脊髄・脳幹などの中枢神経 → 自律神経・内分泌系 → 免疫反応」という流れになります。

4.最終的に免疫細胞では何が起こるのか

ここまでの研究では、鍼刺激を受け取る感覚神経や、その後に働く自律神経経路が詳しく調べられてきました。一方、その先にいる免疫細胞で何が起こっているのかという問題もあります。

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鍼研究ではこれまで、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインやIL-10などの抗炎症性サイトカイン、さらにマクロファージ、好中球、マスト細胞などについて多くの基礎研究が行われてきました。[7]

 

NF-κB、MAPK、TLR4、NLRP3 inflammasomeなど、炎症反応に関係する細胞内シグナルの変化も報告されています。[7]

ただし、こうした研究の多くは、血液や組織を採取したあとに分子や細胞を測定する方法です。「生きている身体の中で免疫細胞が実際にどう動いているのか」を直接観察することは簡単ではありませんでした。

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2026年|好中球の「群がり」を生体内で観察

2026年、『Nature Biotechnology』に、新しい生体イメージング技術RUSH3D-HRを用いた研究が報告されました。[8]

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この研究の主目的は鍼治療の検証ではなく、多数の細胞を広い範囲で、高い解像度を保ちながら生体内で観察できる新しい顕微鏡システムを開発することでした。

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その応用例の一つとして、研究者らはマウスにLPSを投与して炎症を起こし、脾臓に存在する多数の好中球を生きた状態で観察しました。すると、炎症時には多数の好中球が一か所へ移動し、集団を形成するneutrophil swarming(好中球スウォーミング)が確認されました。[8]

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そこでマウスの足三里(ST36)へ0.5 mAの鍼通電刺激を行うと、脾臓でみられていた好中球スウォーミングが明らかに減少しました。電気刺激を行わない鍼刺激では同様の抑制はみられませんでした。[8]

足三里への鍼通電刺激後、脾臓内の好中球スウォーミングが大きく減少しました。Lu et al., Nature Biotechnology, 2026.

この研究の興味深い点は、鍼刺激後に炎症性サイトカインの濃度だけを測定したのではなく、離れた場所にある脾臓で免疫細胞の集団行動が変化する様子を、生きた身体の中で直接観察したことです。

つまり、鍼と炎症の研究に「免疫細胞が実際にどう動くのかを見る」という新しい評価方法が加わったことになります。

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この研究については、「鍼通電刺激で炎症反応はどう変わる? 好中球の「群がり」を生体内で観察」で詳しく紹介しています。

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鍼刺激による抗炎症作用を一つの流れで考える

ここまでの研究をつなげると、鍼刺激と炎症との関係は、おおまかに次のように整理できます。

  1. 皮膚、筋、筋膜、骨膜などに鍼刺激が加わる。

  2. 刺激された組織に分布する感覚神経が活動する。

  3. 感覚情報が脊髄や脳幹などの中枢神経へ伝わる。

  4. 中枢神経から自律神経系や内分泌系を介した反応が起こる。

  5. 副腎や脾臓など、刺激部位から離れた臓器にも影響が及ぶ。

  6. サイトカイン産生や免疫細胞の活動が変化する。

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2014年から2026年までの研究の流れについては、「鍼で炎症はどう変わる?「鍼と免疫」研究の進歩|2014–2026」でも紹介しています。

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人でも炎症反応は変化するのか

ここまで紹介してきた代表的な研究の多くは、マウスを用いた基礎研究です。そのため、「実際に人へ鍼治療を行った場合にも、炎症反応が変化するのか」という点は別に考える必要があります。

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ヒトを対象とした臨床研究でも、CRP、ESR、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症関連マーカーを測定した研究が行われています。

2026年にLoらが発表した系統的レビューでは、筋骨格系疼痛をもつ患者を対象として、鍼治療やドライニードリングが炎症関連マーカーへ及ぼす影響を検討した19件のランダム化比較試験と1件のランダム化クロスオーバー試験、計1,492人が対象となりました。[9]

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個々の研究では、CRP、ESR、TNF-α、IL-1β、IL-6などの低下が報告されています。一方、すべての研究で同じ結果が得られているわけではなく、鍼治療と偽鍼との比較で明確な差が認められなかった炎症指標もありました。[9]

また、対象疾患、刺激方法、刺激量、治療回数、比較対照、測定する炎症マーカーなどが研究ごとに異なっています。そのため、研究結果を一つにまとめて解釈することは簡単ではありません。

この系統的レビューからは、ヒトでも鍼治療によって一部の炎症関連指標が変化する可能性は示されていますが、「鍼治療には臨床的に確立した抗炎症作用がある」とまで言える段階ではありません。[9]

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炎症マーカーが変わることと、病気が改善することは同じではない

作用機序を考えるうえで、ここは特に重要です。

例えば、動物実験で鍼通電刺激後にTNF-αが低下したとしても、それだけで人の炎症性疾患に鍼治療が有効だとは言えません。同様に、ヒトの臨床研究でIL-6やCRPが低下したとしても、その変化が患者さんの症状改善にどの程度つながっているのかは、別に検証する必要があります。

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炎症マーカーは、生体内で何が起こっているかを知るための重要な指標です。一方、患者さんにとって重要なのは、痛み、身体機能、日常生活、QOLなどの臨床的な変化です。

したがって、「鍼刺激によって炎症に関係する生体反応が変化するのか」という作用機序の研究と、「特定の疾患に対して鍼治療が有効なのか」という臨床効果の研究は、関連していますが同じものではありません。

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これは鍼鎮痛の研究でも同様です。「鍼治療で痛みが軽くなるのはなぜ?エビデンスから見る鍼鎮痛の仕組み」でも、作用機序と実際の臨床効果を分けて解説しています。

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鍼と炎症の研究はどこまで進んだのか

鍼治療と炎症に関する研究を振り返ると、研究の問いそのものが少しずつ変化してきたことが分かります。

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初期には、「鍼刺激によって炎症性サイトカインが増えるのか、減るのか」という現象を調べる研究が多く行われていました。

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2014年には、鍼通電刺激による炎症反応の変化に、末梢神経、自律神経、副腎、ドーパミンが関係する可能性が示されました。[3]

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2020年には、刺激する場所や刺激強度によって異なる自律神経経路が動員されることが示されました。[4]

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2021年には、足三里付近への低強度刺激を受け取るPROKR2陽性感覚ニューロンが同定され、鍼刺激の「入口」となる神経まで研究が進みました。[5]

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さらに2026年には、鍼通電刺激後に脾臓で起こる好中球の集団行動の変化を、生きた身体の中で直接観察できるようになりました。[8]

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つまり研究は、「鍼刺激によって炎症性サイトカインが変化する」という現象の観察から、「どこへの、どの程度の刺激を、どの感覚神経が受け取り、どの神経回路を通って、最終的に免疫細胞がどう変化するのか」という、より具体的な問いへ進んできています。

一方で、2024年のvagal-adrenal axisに関する再検討のように、それまで提唱されていた作用機序を見直す研究も行われています。[6]

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研究が進むということは、既存の説明がそのまま積み重なることだけを意味しません。新しい技術や解剖学的知見によって、それまでの説明が修正されることもあります。

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まとめ

鍼刺激と炎症との関係については、これまで多くの基礎研究が行われてきました。

現在では、鍼刺激によって炎症性サイトカインが変化するというだけでなく、刺激を受け取る感覚神経、中枢神経、自律神経、内分泌系、そして免疫細胞までを含めた神経―免疫ネットワークとして、その作用を理解しようとする研究が進んでいます。

 

特に近年は、刺激する場所や刺激量によって神経回路が異なること、刺激を受け取る特定の感覚神経が存在すること、さらに好中球などの免疫細胞の動きまで研究されるようになっています。

一方、こうした詳細な作用機序の多くは、マウスを用いた研究から得られたものです。ヒトでも炎症関連マーカーの変化を示した研究はありますが、結果はまだ一貫していません。また、炎症マーカーが変化することと、特定の疾患に対して臨床効果があることは同じではありません。

そのため現時点では、「鍼には抗炎症作用がある」と単純に結論づけるよりも、鍼刺激によって神経系と免疫系を介した炎症調節反応が起こる可能性があり、その具体的な仕組みが少しずつ明らかになっている、と考えるのが適切です。

 

今後は、基礎研究で明らかになってきた神経―免疫機構が、実際の患者さんの症状や疾患にどの程度関係しているのかを、ヒトを対象とした臨床研究で確認していくことが重要になります。

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参考文献

  1. Borovikova LV, Ivanova S, Zhang M, et al. Vagus nerve stimulation attenuates the systemic inflammatory response to endotoxin. Nature. 2000;405(6785):458-462.

  2. Tracey KJ. The inflammatory reflex. Nature. 2002;420(6917):853-859.

  3. Torres-Rosas R, Yehia G, Peña G, et al. Dopamine mediates vagal modulation of the immune system by electroacupuncture. Nature Medicine. 2014;20(3):291-295.

  4. Liu S, Wang Z, Su Y, et al. Somatotopic organization and intensity dependence in driving distinct NPY-expressing sympathetic pathways by electroacupuncture. Neuron. 2020;108(3):436-450.e7.

  5. Liu S, Wang Z, Su Y, et al. A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal-adrenal axis. Nature. 2021;598(7882):641-645.

  6. Trevizan-Baú P, McAllen RM. What is the vagal-adrenal axis? Journal of Comparative Neurology. 2024;532(7).

  7. Li N, Guo Y, Gong Y, et al. The anti-inflammatory actions and mechanisms of acupuncture from acupoint to target organs via neuro-immune regulation. Journal of Inflammation Research. 2021;14:7191-7224.

  8. Lu Z, Wang M, Chen W, et al. High numerical aperture confocal volumetric mesoscope reveals mesoscale subcellular dynamics in vivo. Nature Biotechnology. 2026. doi:10.1038/s41587-026-03231-z.

  9. Lo CN, Fung MKL, Leung BPL. Immunomodulatory Effects of Acupuncture on Inflammatory Markers in Patients with Musculoskeletal Pain: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Muscles. 2026;5(2):36.

​このページを書いた人

PROFILE

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監修

鍼灸師 松浦知史

東京有明医療大学首席卒。福島県立医科大学会津医療センター研修。研修終了後は埼玉医科大学東洋医学科、ならびに同大学かわごえクリニックを経て、大慈松浦鍼灸院、神保町十河医院附属鍼灸院副院長。

松浦知史
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